• すべての道は金利に通ず by 鈴木涼介氏(シリーズ:ベテランに聞く)

    一國の経済の基礎的條件(ファンダメンタルズ)や金融政策と最も密接に関わるのは金利の市場だろう。しかも一回あたりの取引額が大きく、名だたる金融機関やヘッジファンドが慎重に立ち回るため、株や外國為替よりも理路整然とした動きをしやすいとされる。ドイツ銀行やHSBCロンドンで敏腕の金利ディーラーとして活躍した鈴木涼介氏は現在は仮想通貨の世界に身を置くが、自らの経験を踏まえて「すべての道は金利に通ず」と明言する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今晶、尾崎也彌】 鈴木涼介(すずき?りょうすけ)氏 高校から英國で教育を受け、ロンドン大のキングスカレッジ自然科學工學部數學科で學んだのちドイツ証券に入社。円金利スワップ擔當としてディーラーのキャリアをスタートさせた。ドイツ銀行東京支店を経て英國に戻り、ドイツ銀ロンドン拠點の金利?通貨スワップデスクでヘッドトレーダーを務めた。2013年に英HSBCロンドンに移籍し主要7カ國(G7)短期金利?通貨スワップ部門のヘッド。18年に獨立してゼニファス?キャピタルを立ち上げ。仮想通貨ヘッジファンドを運営するほか、一般向け投資教育プラットフォームの構築を目指し、ツイッターで情報発信も ■判斷に迷ったら金利を見よ 外為市場には「金利と為替の方向性が違ったら、たいてい金利が正しい」との自虐的な教訓がある。債券や短期金融市場の効率性と合理性をよくあらわしていると思う。投資判斷に悩んだら必ず金利動向を參照すべきだ。 もちろん株や為替と同様、金利にも情報や需給の偏りがもたらすゆがみは生じる。だが、きわめて見えにくい。短期資金やデリバティブ(派生商品)の取引は參加者の信用力に応じて価格や金利水準がころころと変わるため、惑わされるのだ。そんな中で巨額のお金を回していくのだから、相場環境とゆがみの有無を的確に判斷できなければ絶対に生き殘れない。 例えば現在、日本の金融機関は「ベーシススワップ」や「為替スワップ」を通じてドルを調達する際に大幅な上乗せ金利を求められるのに対し、ドルの保有者は取引相手を選べば円をかなり安く調達できる。さらにドルの需給が引き締まりがちな海外の決算期末を意識し、スワップを年末年始を挾む期間にするだけで円のコストはさらに下がり、國庫短期証券(TB)での運用利回りは良くなる。 もしそのような微妙な違いに気づき、収益を高められる人なら他の市場でも必ずつぶしがきく。資産の割安?割高を見極めて売買する「レラティブバリュー」運用で十分生き殘れるだろう。 ■「負けて覚える相場かな」 相撲界に「負けて覚える相撲かな」との格言がある。相場も実踐あるのみだろう。オンライン証券會社がよく提供している模擬トレードのシステムで練習してからなどとは決して思わないことだ。身銭を切ってディーリングに臨み、負けてお金を失うからこそ真剣に敗因と向き合い、次につなげられる。 もちろん大けがばかりして再起不能になっては意味がない。自信がなければ投じる資金を最小限に抑え、トライ?アンド?エラーの精神を忘れずに臨むべきだ。 長めの相場シナリオをたてるときは過去の経験則やチャートには頼らず、ファンダメンタルズの変化を意識しながらまずは自分で考えてほしい。ファンダメンタルズ分析は外為証拠金取引(FX)や株では短期トレーダーを中心に軽視されがちだが、金利系の投資家は誰もがきちんとやっている。 ■仮想通貨でも金利ディーラーの視點 インターネット上の仮想通貨は引き続きビットコイン(BTC)が主役になるだろう。足元では機関投資家や富裕層はあまり仮想通貨に手を出していない。ただ富裕層は「我」や向上心が強く、もっともうけて他人との差を広げたいと頑張る。仮想通貨市場の將來性や収益性が高いと判斷すればすぐに買いを増やしそうだ。 ポイントは仮想通貨の上場投資信託(ETF)の行方だ。承認されれば正式に「アセット(資産)クラス」の仲間入りをする。機関投資家の保有ハードルが低くなるので、気の早い個人は先回りした買いを進め、相場には上昇圧力がかかるだろう。 ここで重要なのは金利ディーラーが大切にする時間軸の視點だ。ビットコインETF市場などが再び拡大に向けて動き出したとしても、法律やシステムが整って実際にマネーが流入するのはだいぶ先の話だ。前のめりな買いに対しては淡々と売り、底値を確かめたほうがよい。 BTC市場の復活までにそれなりに時間がかかるとすると、大口投資家はなかなか持ち高を積みあげられない。では、BTCの代わりはないだろうか。 いま注目しているのはリップル(XRP)だ。一民間企業であるリップル社が深くかかわるXRPは、管理者不在の印象が強い仮想通貨らしからぬファンダメンタルズの底堅さをもつ。銀行間の資金決済にも試験的に用いられ、認知度は高い。 トルコやアルゼンチンといった対外債務が多く、経済基盤が脆弱な國の人々が自國通貨安を回避(ヘッジ)する目的でもリップルは使われやすいとみている。足元ではトルコリラ建てのXRP相場がしばしば値を上げている。トルコのエルドアン體制は安定しているが、経済政策は心もとない。トルコでは銀行口座をあえて持たず、リラ安ヘッジのためにリップルなど仮想通貨を求める人が結構いるようだ。 (隨時掲載)

    相場波亂時こそ、自らをコントロールする by 北野一氏(シリーズ:ベテランに聞く)

    「市場の世界では自らをコントロールできるかが全て」--。1982年に金融の世界に足を踏み入れて以來、債券から為替、株式まで幅広い業務に攜わってきたみずほ証券エクイティ調査部長の北野一氏はこう強調する。金融を巡る環境はめまぐるしく変化しており「過去の経験や教訓を生かすという発想ではなく、日々考えを更新していくことが必要」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)長谷川雄大】 北野一(きたの?はじめ)氏 1982年に大阪大學法學部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。資金証券部で債券トレーディングなどに攜わる。97年に東京三菱証券(現三菱UFJモルガン?スタンレー証券)に移り、日本株チーフ?ストラテジストを務める。2006年からJPモルガン証券やモルガン?スタンレーMUFG証券、バークレイズ証券でそれぞれチーフ?ストラテジストを務める。16年にみずほ証券に入社。エクイティ調査部長を務め、18年8月からエコノミストも兼任 ■ブラックマンデーで未熟さを痛感 金融自由化まっただ中の1982年、當時の三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入社した私は、85年に債券ディーリングを行う資金証券部に異動した。世は國債の大量発行時代。規制の緩和?撤廃で新しく銀行に認可された業務だ。當時の銀行にとっては新しい業務で経験者がいない。若手ではあるが、指標銘柄は自分が中心に売買していた。 そこで自分の未熟さを思い知った出來事がある。87年10月19日の「暗黒の月曜日(ブラックマンデー)」だ。米國株式市場で、ダウ工業株30種平均が1日にして500ドル超下落した。下落率は23%と、世界恐慌時を上回って史上最大。米市場では株が売られるとともに債券も売られた。ただ、さすがに株の下落が激しく、徐々に米債券は「フライト?トゥ?クオリティー(質への逃避)」という形で買い戻された。私はその時、債券で金利低下方向にポジションを持っており、日本の債券も買われていればそのままで良かった。しかし、なぜか日本の債券は買われず、金利は高止まりしたまま日本市場に戻ってきた。ロスカットのルール上、寄りつきでそのポジションをクローズせざるを得ず、午前中はぼうぜん自失だった。 後から思えば、87年5月當時の指標銘柄の利回りは2.55%(10年債)まで下がっていた。當時の短期金利が4%くらいだったので、大幅な「逆イールド」だ。指標銘柄のプレミアムといってもあまりにもミスプライシングだが、それが放置されるくらい市場が未熟だったのだろう。そんな逆イールドの巻き戻しが始まり、債券先物で大損する事業法人が出てきて、その後に起こったのがブラックマンデーだった。米國とドイツは金融政策を巡って不協和音があり、米國が金融引き締めに向かったり米國株が極めて割高に買われていたりと、大波亂の兆候はすでにあったのだ。 もう少し全體像がみえていれば、ロスカットせずに當時組んでいた金利低下方向のポジションを生かすことができたと思う。しかし當時は日々、目の前にある日本の指標銘柄の値動きしか見えておらず、視野があまりにも狹かった。後場になって再度ポジションを金利低下方向に復元したが、絶好のきっかけがあったにもかかわらず、初動を慌てて大間違いをした。何が起ころうと常に落ち著いていること、しっかりとできる限りの情報を収集することが大切だと痛感した。 ■心に刺さった先輩ディーラーの言葉 88年にニューヨークに転勤した。大変尊敬できる先輩ディーラーとの食事の際、非常に印象に殘っている言葉がある。どんなアプローチで相場をみているのかと聞かれ、私は「予測精度を上げることで、収益を大きくできる」と答えた。すると、先輩の言葉は「そのアプローチは100%間違っている」。「予測精度を上げても、買いたい時に本當に買えるのか、売りたい時に本當に売れるのか。本當の買い場や売り場とは、相場が大きく動いて怖くて売買できない時だ。その時に自分をコントロールできるか否かが全てだ」と言うのだ。ブラックマンデーで失敗をした後だったので、その言葉は心に刺さった。 ニューヨークで米國債のディーリングに攜わった後は、日本に戻って為替アナリスト業務に従事した。日本の銀行に対して子會社を通じた株のビジネスが認可され、その立ち上げで97年に東京三菱証券(現三菱UFJモルガン?スタンレー証券)に移って株式リサーチを擔當した。債券から為替、株式まで幅広く経験したことで、各分野で「感覚のようなもの」を培うことができたと思う。金融の世界では、どれくらいの値幅や金利が動いたら心理的に動かされるのかなど、テキストを読むだけでは分からない感覚がある。どの分野でも相場という意味では同じで「感覚のようなもの」や経験は生かせる。 ただ、金融は過去の學習や経験だけで乗り切れる単純で楽な世界ではなく、日々新しく學ぶことのほうが多い。常に考えをアップデートし、新しい考え方を吸収していかなければならない。金融界では繰り返し、様々な理論が生まれては廃れる。例えば、教科書には「株は業績と金利で決まる」と教えるが、実は正しくない。正確には「業績か金利で決まる」であり、なぜ違うのかを常に考えていかなければならない。 ■自分の「性能」や「歩留まり」を知るべし これまでの経験で特に苦労したのは、トレーダーではなくリサーチに移ってからで、アイデアが浮かばない時だ。ただ、そういう時は焦らずに情報収集作業に努めること。自分の「性能」や「歩留まり」を知ることも大事だ。自分の場合は1のアウトプットを出すために100の情報をインプットしなければならない。自分の性能を知るために大學までの學校教育があると考えている。   マネジメントとリサーチでは仕事に違いがあるようにみえるが、本質は変わらない。異なるのはインプットとアウトプットの形だけで、インプットがなければアウトプットが出ないことに変わりはない。他社との競爭という意味で、勝機があるのは案外マネジメントだ。リサーチは誰もがインプットの重要性を知っているのに対し、マネジメントの仕事では意外とインプットが重視されていないためだ。マネジメントにとって必要なインプットは何かをつかんだ者が勝つ。 (隨時掲載)    

    米の利上げ打ち止め意外に早い? 「19年1回」説が臺頭、FOMC內はハト優位の見方

    米國でにわかに早期の利上げ停止観測が浮上している。米連邦準備理事會(FRB)高官が利上げサイクルを終える可能性に觸れたとの21日の一部報道がきっかけだ。市場では今後のFRBの政策運営について、2019年の米連邦公開市場委員會(FOMC)で投票権をもつ委員の顔ぶれに注目度が高まってきた。 米金利引き上げは米國內だけの問題にとどまらない。大和総研の小林俊介エコノミストは、米長期金利の上昇やそれがもたらすドル高で新興國のリスク資産への投資が細り、世界経済に打撃を與えかねない點を強調し「株式や國際商品市場が危うさを見せる中で來年の利上げはせいぜい2回までではないか」と話す。 ■FOMCメンバーの政策金利見通し(ドットチャート、9月時點) FRBが9月のFOMCで示した利上げ見通しの中心は、一回當たりの引き上げ幅を0.25%とすると3回。だが実際の會合では、その時點で投票権を持つメンバーの考え方に左右される。12月の追加利上げが既定路線としても、構成が変わる來年以降とは分けて考えなければならない。 FOMCでは常に副議長を務めるニューヨーク連銀総裁を除き、投票権を持つ地區連銀総裁の顔ぶれは毎年変わる。19年はどうか。新たに投票権を有するのはシカゴとボストン、セントルイス、カンザスシティーの各連銀総裁。このうちシカゴ連銀のエバンス総裁とセントルイス連銀のブラード総裁はさらなる金融引き締めには慎重な「ハト派」との評価が今のところ多い。 FRBのクラリダ副議長が先週末にハト派的な発言をした影響もあり、市場では「來年はFRB內部のパワーバランスが利上げペース鈍化に傾く」との見方が増えている。シカゴ?マーカンタイル取引所(CME)グループが金利先物から算出する米國の利上げ予想「フェドウオッチ」でも、1カ月前に最も高かった「19年2回」の確率が低下し、22日時點で「19年1回」がトップとなっている。 野村証券の宍戸知暁シニアエコノミストは「重要なのはパウエルFRB議長がどう考えるかだ」と指摘。「18年はイエレン前FRB議長の敷いたレールに乗るだけでよかったが、19年は獨自の判斷が必要になるだろう」と予想する。 パウエル氏は10月5日、「(中立金利まで)道のりは長い」と述べ、その後1カ月あまり続いた株価の調整局面を招いた。年末にかけて何らかの軌道修正をするのかが焦點になりそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN) 金岡弘記】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    「中國の司馬遼太郎」の遺言 アリババ會長も心酔、経済人と小説家の二刀流

    【NQN香港=桶本典子】中國の時代小説である「武俠小説」の大家?金庸(本名?査良公鏞)氏が10月末に94歳で亡くなった。「中國の司馬遼太郎」ともいえる大人気作家で、代表作の1つ「射雕英雄伝」の映畫は日本でも1996年に「楽園の瑕(きず)」のタイトルで公開された。金氏は香港有力紙の「明報」を創刊するなど上場企業オーナーとしても手腕を発揮。中國では最近、文化人による財テク不祥事が目立つが、金氏は小説家と経済人の「二刀流」を見事にやり遂げた。 「先生がいなかったらアリババは存在していたかどうか」――。中國電子商取引(EC)最大手アリババ集団の馬雲(ジャック?マー)會長は金氏の訃報を受け、ミニブログ上で追悼文を発表した。馬氏は金氏と20年近い親交があったといい、自社オフィスの會議室に金氏の小説から取った部屋名を付けるほどの大ファン。中國の習近平(シー?ジンピン)國家主席や臺灣総統府も哀悼の意を表明し、華人社會における金氏の存在の大きさを印象づけた。 金氏の小説を座右の書とする政財界人が多いのは、登場人物が武術だけでなく商才もあるからだ。例えば「射雕英雄伝」の主人公は、知らずに優しくしたホームレスの娘が実は富豪の娘で後に結婚することになるなど、経済面でもサクセスストーリーを歩む。中國のネット上には金氏の小説の登場人物の財テク法を分析する書き込みがあふれ、小説を題材に銘柄選定法を説く株式投資家もいる。 金氏自身も「中國の歴史上、最も稼いだ文化人」と呼ばれたほどビジネスの才覚があった。1959年に明報を立ち上げたのに続き、週刊誌や月刊誌を次々創刊。旅行會社経営にも手を伸ばした。明報は91年に香港市場に上場(現社名は世界華文媒體)し、創業時の資本金わずか10萬香港???から上場時で時価総額8億香港???(現在の為替レートで約110億円)の企業に成長した。 しかし金氏は明報上場後、保有株をほとんど手放している。當時の売卻益は10億香港???ともいわれた。市場參加者の間では「その後のネットメディアの隆盛を考えると、早めに紙媒體の株を売ったのは賢明だった」(地元証券會社のアナリスト)との評価が聞かれる。投資家として時機を見極める眼力も持っていたわけだ。 文化活動で一獲千金を実現した後、財テクに乗り出すお金持ちは中國にも多いが、みな成功するとは限らない。中國では國際的人気女優?范冰冰(ファン?ビンビン)さんが10月、脫稅で巨額の罰金を科せられたばかり。有名女優の趙薇(ヴィッキー?チャオ)さんの株式投資トラブルなどの失敗例もある。その點、金氏は「武俠」の精神通り、投資の引き際も鮮やかだった。晩年は80歳を超えて英ケンブリッジ大學の大學院に入學し、學問に専念したという。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    FXはパチンコや競馬と違う by 太田二郎氏(シリーズ:ベテランに聞く)

    日本の外國為替証拠金(FX)取引は今も昔も、一定のレンジを前提に相場の流れに逆らう「逆張り」が主流だ。相場経験が淺い人は戦略なしに何となくレンジを決めることが多く、1990年代後半から相次いだ金融危機や市場の混亂にうまく対応できなかった。FX取引がまだマージントレードと呼ばれていた草創期から投資家の浮き沈みをつぶさに眺めてきた為替ストラテジストの太田二郎氏は「ともかく1つのやり方を極めるべきだ」と諭す。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今晶】 太田二郎(おおた?じろう)氏 1970年代の終わりに外國為替業界入りし、米ファーストボストン(現クレディ?スイス)やドイツのBHF銀行を経て98年、英ナットウェスト銀行でマージントレードの営業を始める。その後はFX向け取引システムのフロンティアである米GFT(Global Forex Trading)東京支店でキャリアを積んだ。現在は個人向けの外為アナリスト、ストラテジストとして情報提供を続ける ■直感頼みは通じない 現代の外為取引で重要なのはいかに自らを律するかだ。(自己資金よりも多い額を運用できる仕組みの)レバレッジの比率を抑えたり、予想が外れたらすぐに損失覚悟の持ち高解消を進めたりするのは當然だ。もう1つ、チャートでもファンダメンタルズ(経済の基礎的條件)でも何でも構わないのでこだわりを持つとよい。 ある投資家は、テクニカル分析の「ギャン?ルール」を用いたトレーディングに専念している。法則を発見したウィリアム?ギャン氏はルールに厳格に従い、勝率を高めたことで知られる。ここで言いたいのはギャン?ルールが良いか悪いかではない。1つの分野を極めていこうとする探究心だ。 かつてのディーリング部門は自らの経験と勘に頼る職人の世界で、リスク管理などあってないような足元では考えられないところだった。英ナットウェスト銀行(現ロイヤルバンク?オブ?スコットランド)にいたころは自己勘定でディーリングをしながら顧客対応をし、銀行全體の収益を押し上げた。同時代のトレーダーには大損の危険を顧みず巨額の持ち高を振り回していた猛者が多い。當時は參加者の數が少なかったので直感頼みでもどうにかなったが、市場が拡大した一方でとれるリスクが少ない現在では無理だ。 為替相場は株や債券に比べるとはるかにランダムに動く。勝てたとしても打率はせいぜい3~4割だろう。漫然とディーリングをしていてはせっかくの勝機にきちんと資金を投じられない。 ■「このやり方で必ず勝てる」は絶対にない FXを手掛ける個人のマインドはあまり変わっていない。パチンコや競馬をするようなレジャー感覚で、ともかく楽をしてもうけたいとの考えが強い。安易にレバレッジ運用に傾くために想定外の事態にもろく、2000年にかけての日本の金融危機や01年の米同時多発テロ、03年のイラク戦爭、08年のリーマン?ショック、11年の東日本大震災の後の大荒れの市場に耐えきれず次々と去っていった。 退場者には共通項がある。書籍やウェブサイトで「このやり方なら必ず勝てる」といった根拠がはっきりしない取引手法や経験則を疑いもせずに取り入れるのだ。自分で考えを巡らせていないのでまったく応用がきかない。 各國の経済情勢や金融政策は奧が深い。例えば米雇用統計では非農業部門雇用者數や失業率だけでなく、時間當たりの賃金や広義の失業率などチェックすべきポイントが少なくない。それに対し1つのパターンや取引手法で語れるはずがない。にもかかわらず、たいてい「必勝法」のやすきに流れてしまう。努力が必ず報われるわけではないが、楽をしていては絶対に勝てない。 ■為替の需給、かなり複雑に 17年に起きたインターネット上の仮想通貨バブルと18年初めにかけての崩壊をみると08年までのFX隆盛期を思い出す。FXもかつてははるかに規制が緩く、レバレッジ比率の上限は會社によっては數百倍にも達していた。「簡単にもうけられる」との甘い言葉に乗り、ろくにリスクを考慮せずに高いレバレッジをかけて多額の損失をこうむるケースが後を絶たなかった。 為替需給はここ10年ほどでかなり複雑になった。昔の常識は當てはまらないと割り切るべきだろう。主要國の経済は総じて成熟し、日米歐ともに潛在成長率が下がって為替の大きな変動をもたらすような金利差は生じにくくなってきた。 それでも相場に対する心構えの基本は変わらないはずだ。テクニカルを用いるにせよ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的條件)に傾斜するにせよ、何らかの勝ちパターンを見つけてこだわってほしいと思っている。 (隨時掲載)

    アナリストは市場の羅針盤たれ by 海津政信氏 (シリーズ:ベテランに聞く)

    市場の荒波を乗り越えてきた大ベテランたちに、これからの相場との向き合い方を尋ねる「ベテランに聞く」。野村証券金融経済研究所の海津政信シニア?リサーチ?フェロー兼アドバイザーは、企業アナリストの経験が豊富で、その後、日本株ストラテジストとしても活躍した。アナリストの役割として「正しい値付けがおこなわれるよう『市場の羅針盤』としての機能を果たすことだ」と話す。そのためには「論理的な理由付けをもとに、適切な投資判斷を示すことが必要だ」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹】 海津政信(かいづ?まさのぶ)氏 1975年、橫浜市立大學商學部卒業後、野村総合研究所入社。建設、住宅?不動産、家電?電子部品、機械擔當のアナリストを経て、日本株ストラテジスト。2002年野村証券金融研究所所長、12年1月より現職 ■論理的な理由付けで適切な投資判斷 市場にはその時々に応じて適切な投資判斷があり、そのためには論理的な理由付けが必要だ。一貫して強気とか弱気ということはあり得ない。政治と経済、産業、マーケットの4つの側面を意識して、多面的に検討することが望ましい。 アナリストだからといって株式相場ばかりを見ていては仕事は出來ない。特に政治をみる力は重要だ。政治やマクロの情報には株式市場のようなインサイダー規制がない。人脈を作り、情報収集力や分析力を高めれば、アナリストの競爭力になる。 例えば、今年9月の日米の閣僚級貿易協議(FFR)で、自動車関稅を回避できると私が確信した時の判斷材料は3つある。まず、內閣府が公表した安倍晉三首相とトランプ米大統領の夕食會の寫真で、両首脳が打ち解けた雰囲気で寫っていた。トランプ氏は表情に出やすいので、この雰囲気なら會談はうまくいったと思えた。次は霞が関への電話。ある官僚は「もし貿易協議で自動車関稅25%が決まっていたら、今ごろ霞が関は大騒ぎだ」と話した。また、日米の貿易摩擦の影響が軽いとされて買われていたスズキ株が下落したことで、関稅回避の可能性が高まったサインとみた。材料を多面的に集めて総合的に判斷する。こうした視點が欠かせない。 世の中のムードに流されない冷靜さも必要だ。2000年2月のインターネットバブル絶頂期、私はヤフー株に慎重な見方を示した。インターネットが世の中の仕組みを大きく変えることは予想していたが、広告市場の全てがインターネット広告になったとしても、PERが70倍から80倍の水準にあるのは割高だと判斷したからだ。 ■若手アナリストは仮説検証力を鍛え、企業経営に助言を 「市場の羅針盤」としてのアナリストの役割は今も昔も変わらない。これからのアナリストは、今まで以上に仮説を立て、検証する力が求められる。上場企業に公平な情報開示を義務付ける「フェア?ディスクロージャー?ルール」の下では、情報を得る機會が限られるからだ。 私は研究所所長時代に「事前に仮説を立てて決算説明會に參加し、疑問點を企業にぶつけ、説明會が終わった時點でその企業の數年先の1株當たり利益(EPS)をイメージできるようにしなさい」と部下に指導した。このような取り組みが、アナリストの競爭力を高めると考える。若手のアナリストにはぜひ、企業経営に助言する力を付けてもらいたい。アナリストの視點で見ると、企業の課題が見えてくるはずだ。 ■2028年、日経平均は3萬8900円を取り戻す 日経平均が今年1月に26年ぶりの高値を付けたのは、日本企業が稼ぐ力を取り戻したからだ。非製造業が大きく成長し、主力の製造業も回復した。ただ、米國発の景気後退で2020年ころに日経平均は踴り場に入る公算が大きい。19年9月で米國の利上げがいったん終わると、為替が円高?ドル安に振れる。企業収益が伸び悩み、日経平均は2萬~2萬5000円のレンジ相場が1~2年続くだろう。その後、景気は再び拡大し、28年には利益水準から換算して日経平均株価はバブル期の水準である3萬8900円まで上昇するとみる。 そのための條件は2つだ。1つ目は日本企業がデジタル革命に真っ向から取り組み、克服していくことだ。電気自動車(EV)や自動運転、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」など世界のデジタル化に応じて、ビジネスモデルを柔軟に変化させる必要があるだろう。2つ目は日本の個人の金融資産約1800兆円をもとに運用収益を高め、きちんと消費に回していくことだ。 (隨時掲載)

    ビットコインの変動率が低下、トルコリラ並みに

    インターネット上の仮想通貨の変動率(ボラティリティー)がここにきて安定している。ビットコインのボラティリティーは期間によっては法定通貨のトルコリラ並みの水準まで下がった。価格の急変動をもたらした投機資金の大部分は既に退散。仮想通貨市場が腳光を浴びる前から取引をしてきたグループが細々と売り買いを繰り返している程度で前途は多難だが、値動きの荒さを嫌う機関投資家からみると參入障壁が下がるというポジティブな要素もある。   30日のビットコインのドル建て価格は1ビットコイン=6300???前後で膠著している。9月までは1日で1000???超上下することも少なくなかったが、10月は大きくても300???程度の変動にほぼ収まっている。   仮想通貨市場の調査などを手掛けるアルトデザインによると、過去の値動きから算出するヒストリカル?ボラティリティー(HV)は直近1カ月で26%前後と、トルコリラの21%臺に比べると5%程度高い水準にとどまっている。直近3カ月のベースでは43%前後と、「トルコショック」を挾んだトルコリラの48%臺よりも低い。   コインチェック問題に揺れた1~2月のビットコインのHVは120~130%臺だった。現在はその5分の1程度しかない。イーサリアムやリップルなど安全性が高いとされる代表的なオルトコインの変動率も軒並み下がっている。   足元では仮想通貨「テザー」を巡る混亂が続いているほか、カナダの交換所が突然取引を止めるなど相変わらずトラブルは多い。それでも現在市場に參加しているベテランの仮想通貨トレーダーや通貨の採掘者(マイナー)は「市場健全化に向けて避けては通れない道で、想定の範囲內」とほぼ反応しなかった。   波亂材料に対する抵抗力の強さは長期投資にとってはプラスだ。國際通貨研究所の志波和幸主任研究員は「価格がある程度安定していなければ投資家層は広げられない。このまま相場が落ち著けば規制整備に向けた追い風になるだろう」と話す。仮想通貨全體の売買高はピークだった今年1月から大幅に減少しているが、志波氏は「身の丈にあった市場規模は、健全性を高めるために大切なプロセスの1つ」とみる。   主に仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)で生み出されるオルトコインの増加にも一服感が出ている。セキュリティー面で劣るオルトは悪意を持ったハッカーの標的になるなど市場を混亂させてきたが、投資家の視線が厳しくなり、10月はICOによる資金調達額は前年同月割れになるもようだ。   國が旗振り役となってICOの規制を進める機運も高まっている。さらに各國の金融當局者が集まる金融活動作業部會(FATF)は、來年6月までに仮想通貨取引などに関する最初の國際ルール策定に向けて動いているようだ。同じ時期に開かれる20カ國?地域(G20)首脳會議の議長國日本が主導権を取るかもしれない。市場では「外國為替証拠金(FX)取引がレバレッジ規制などで通った道を仮想通貨もようやくたどれる」との期待が出てきた。   【日経QUICKニュース(NQN ) 尾崎也彌】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    ささやかれ始めた日銀オペ見直し 「入札翌日は見送り」なら金利上昇も 23日懇談會に関心

    日銀が23日に市場関係者と開く「市場調節に関する懇談會」を前に、國債買い入れオペ(公開市場操作)見直しの観測が浮上している。市場機能の改善に向け、參加者の間で有力なのが國債入札翌日の買いオペを見送るのではないかというものだ。議題にあがれば現実味が増しそうで、來週の懇談會に関心が高まっている。 関係者に「オペ懇」と呼ばれるこの懇談會は年2回開かれ、日銀の擔當者と金融機関の市場部門関係者が參加する。昨年2月の會合ではオペの日程の事前通知が話題となり、その後日銀は毎月末に日程も含めた運営方針を明らかにするようになった「実績」がある。 今回の見直しの候補としては、財務省による國債入札の翌日は入札のあった年限の債券を対象としたオペを見送るとの観測がある。この説を有力視するみずほ証券の上家秀裕マーケットアナリストは「市場に出回る時間が長くなるため、流動性向上につながる」とみている。入札翌日にオペをしなければ「國債を多めに応札しても『翌日のオペに持ち込めば良い』との安心感がなくなるため、金利上昇要因となる」との見方もある。 日銀のTB(國庫短期証券)オペは3カ月物TB入札がある場合は翌営業日にオペを実施してきた。だが、10月はこの「暗黙のルール」通りではなくなっている。この変化が、國債でも入札翌日のオペを見送るとの観測につながっている。 オペの回數を減らしたり、オペ予定日を非公開化したりする説も市場にはある。予定日の非公開化は、不確実性が強まり、相場の変動率(ボラティリティー)が上がる可能性が高い。だが「債券相場の動きが『日銀のオペ日當てゲーム』のようになる」(國內証券の債券擔當者)との懸念があり、否定的な見方もくすぶる。 日銀は7月末に金融緩和継続のための枠組み強化を打ち出したばかり。そのため今回のオペ懇については「政策変更後の市場動向の意見交換にとどまる」(大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジスト)との見方も少なくない。 だが、再び膠著感を強める債券相場に変化を求める市場関係者は多く、その期待が今回のオペ懇への関心を高めている。 〔日経QUICKニュース(NQN) 矢內純一〕 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    深読み裏読み、為替報告書に戦々恐々の円相場 米政権の本音どこに

    16日の東京外國為替市場で円相場は反落したが、午後にかけては底堅さが目立った。日経平均株価の上昇に伴い円売りが増えてもおかしくはないところだが、近々公表が予想される米國の半期為替報告書に円買いを誘う內容が含まれるかもしれないとの思惑から、市場參加者は円売りへの慎重姿勢を崩せずにいる。 16日の東京市場での円の安値は1???=112円10銭臺。前日17時時點の比較では30銭程度の円安水準にとどまる。為替報告書待ちの空気がある中、米國とサウジアラビアの関係悪化に対する懸念もくすぶったままで「積極的にリスクをとれる環境にはない」(みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジスト)という。 今回の米為替報告書での焦點は、中國が為替操作國に認定されるかだ。市場では「米國は中國の為替操作國指定は見送り、人民元安のけん制にとどめる」との見方が増えている。一部メディアが「米財務省職員がムニューシン財務長官に中國は人民元を操作していないと報告した」と報じたことが根拠となっているようだ。それでも「トランプ米政権が貿易不均衡を是正するために中國を標的にする可能性は殘る」との警戒感は解けていない。 トランプ氏が対中貿易赤字を減らす構えを示し続ける限り、同様に対米黒字が多い日本にも矛先が向かいかねない――。外為市場ではそんな深読みが出ている。「為替操作國に指定するための條件が変わるのではないか」、「円の実質実効レートの低さを改めて指摘し、暗に円安進行をけん制するのではないか」といった観測が聞かれる。 大和証券の亀岡裕次チーフ為替アナリストは「為替報告書はかつては『景気の下支えを金融政策に頼りすぎないよう財政も活用したバランス良い施策を』と促したことがある」と振り返る。そのうえで「今回、間接的にでも金融緩和にまで言及すれば、日銀が緩和を続けにくいとの連想を誘っておかしくない」と話していた。 ふたを開けてみれば報告書の內容は想定の範囲內で、懸念払拭により円売り?ドル買いが膨らむ展開もあり得る。だがトランプ氏の本音はどうなのか、すぐには判定できそうにない。米中間選挙を3週間後に控えた現狀で、思い切ったリスク運用や円売りにはかじを切りにくい。そんな空気が市場全體に流れている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 蔭山道子】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    米中対立で甦る「ココム」の亡霊? 日米ハイテク業界に株安の黒い雲

    米國と中國の対立が貿易から安全保障へと広がり、投資家が神経をとがらせている。あおりを受けた米IT(情報技術)大手の株価は先週後半以降、大きく水準を切り下げ、日本のハイテク株にも余波が及んでいる。米中対立の度がさらに深まれば、世界の株式市場への悪影響が大きくなるとの不安が広がっている。 「対中貿易制裁の次の米國の標的は歐州連合(EU)や日本を巻き込んだ『ココム規制』の復活ではないか」。先月、複數の米シンクタンクの研究員と意見交換したパルナッソス?インベストメント?ストラテジーズの宮島秀直氏はこう読む。 ココムとは対共産圏輸出統制委員會と呼ばれ、舊ソ連や中國など共産諸國向けの戦略物資の輸出禁止を目的に発足した國際機関を指す。冷戦時代の象徴の一つで日米歐の17カ國が加盟していたが1994年に解散した。 宮島氏の分析の背景にはITを経由した情報漏えいや選挙介入に対する與野黨の垣根を越えた米國內での危機感の高まりがある。 先週4日には「アップルなど約30の米企業が中國製の特殊な半導體が組み込まれたサーバーを経由して情報流出の脅威にさらされている」と米ブルームバーグ通信が報道。IT大手の株価が売られ、QUICK?ファクトセットによれば代表的なGAFA(グーグル=アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン?ドット?コム)と呼ばれる4銘柄の時価総額は4日から8日までに約1370億???(4%、約15兆円)減少した。 足元でGAFA銘柄の下げが目立つ 中國製「スパイ半導體」と呼ばれる問題だが、ハッキングの疑いの発端は15年だ。それがこの時期に大きく取り上げられたのは、米議會中間選挙前というタイミングもあるが、米國の世論がIT企業のプライバシー対策に神経質になっている証拠と受け取れる。 「ココム復活」となれば日本への影響も小さくない。內閣府によれば17年の日本から中國への輸出総額1658億ドル(約19兆円)の4割はIC(集積回路)や半導體製造裝置、産業用ロボットなどハイテク製品だ。5日以降、9日までに東京エレクトロンは約8%、SUMCOは13%下げる場面があった。 「仮にココム復活は回避されたとしても、中國経由で米國にハイテク製品を輸出する日本企業は検査などのコスト負擔が増加する」(第一生命経済研究所の桂畑誠治氏)。市場ではこんな見方も浮上している。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    市場が気をもむ「10.11の30年債」 三菱モルガン先物取引停止、入札で波亂?

    三菱UFJモルガン?スタンレー証券が來週9~11日、自己勘定による債券先物取引を停止することが話題となっている。過去の債券先物による相場操縦を受けた大阪取引所の処分の一環だが、問題は停止期間の11日、30年物國債の入札が控えている點だ。國內債市場の主要プレーヤーの1つである三菱モルガンが、先物によるヘッジ取引ができないタイミングで入札を迎える。それが市場全體の不安のタネになっている。 三菱モルガンの國債入札での存在感は大きい。4~9月の國債市場特別參加者(プライマリーディーラー、PD)での落札額(デュレーション換算値)はトップ。超長期債、長期債、中期債、短期債のすべての區分で1位となっている。先物ヘッジができないことで応札に慎重になるとの見方もあるが、「PDの応札責任もあるので大きく応札が減るとは考えにくい」(國內証券)。 では先物の代わりにどういう方法でヘッジをしてくるのだろうか。その1つとみられているのが現物債の売りだ。今週に入り、理由のはっきりしない超長期債の売りが出ると「ヘッジの一環ではないか」との噂が流れたという。 市場では30年債入札に向け、ヘッジ目的で10年債や20年債に売りを出してくるとの読みがある。米債安の傾向や日銀の國債買い入れ減額観測などを背景に債券需給が緩みやすくなる中、4日の30年債利回りは0.950%と日銀が長短金利操作を導入した2016年9月以降で最高の水準に上昇した。 ? 三菱モルガンの先物取引停止は、一段の金利上昇につながるのか。市場関係者は気をもんでいる。 <超長期債などの利回り推移> 【日経QUICKニュース(NQN) 矢內純一】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    1ドル360円でも70円でも、謙虛に相場を追いかける by 中山恒博氏(シリーズ:ベテランに聞く)

    「非常識な為替相場は長続きしない」。言うはやすしだが、修羅場をくぐり抜けたつわものたちでも見極めは難しい。ドル高是正で主要5カ國が協調介入した1985年9月のプラザ合意時、日本興業銀行(現みずほ銀行)の為替課長として最前線に立った大物ディーラーの中山恒博氏も「やさしい相場など一度もなかった」と振り返る。そのうえで「年に2~3回程度の數少ない勝負どきをいかせるよう、謙虛に相場の異変を察する感覚を研ぎ澄ますしかない」と話す。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)=荒木望】 中山恒博(なかやま?つねひろ)氏 1971年に慶大経済學部を卒業後、興銀に入行。85年9月のプラザ合意時に為替課長を務める。2004年にみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)副頭取に昇格した後、07年にメリルリンチ日本証券に移って代表取締役會長、18年6月以降は東海東京フィナンシャル?ホールディングス取締役を務める ■相場の「成熟期」を見極めよ これまで円相場の変動を1???=360円から70円臺までみてきたが、やさしかった相場など一度もなかった。巨大で無機質な相場に立ち向かい、相場がどの方向に進むのか一人のディーラーとして謙虛に追いかけていくしかない。 メディアやエコノミストは「現在の相場には不透明感が強い」とよく言う。相場がなぜ動いたのか解説しなければいけないから、不安定な相場はついつい「不透明」と結論づけたくなるのだろう。だがディーラーの立場で言わせてもらえば、相場が動くのにいちいち理由はない。同じ現象が起こっても、部屋のなかにガスが充満していればマッチ一本で爆発するし、していなければ何も起こらない。相場に當てはめると成熟しているかどうかの違いだけだ。 相場の機が熟しているのかの見極めは、持ち高の傾きなどを追いかけ続けることで培われる肌感覚に頼るしかない。ある相場が常識的にみておかしいと思う感覚は大切にすべきだ。違和感を持つことは年に2~3回しかないが、そういうときには徹底的にやる。 「愚者は経験に學び、賢者は歴史に學ぶ」との言葉がある。経験からしか物事を理解できないとすると、理解するまでに相當な數の失敗を繰り返さないといけない。謙虛に過去の事例を學び、「常識」を大事にすることが効率的で重要だと思う。例えばバブル相場が破れると、1929年の大恐慌を研究したガルブレイスを読み始める人が多い。そうやって常識を養うべきだろう。 ■「見切り千両」を意識せよ ディーリングで難しいのは損切り(ロスカット)と利益の最大化だ。相場の格言に「見切り千両」とある通り、安定して勝ち続ける人は慎重で、ロスカットがうまい。自分の周りでも優れたディーラーは臆病な人間が多かったと記憶している。大膽な人は華々しくもうけて、大膽に損をする。9勝1敗でも、結局その1敗で9勝を失うケースが昔はよくあった。 損切りのポイントは勘に頼ってはいけない。電気機器のブレーカーのように機械的なルールとして決めなければいけない。たとえ何があっても、あらかじめ決めた水準でまずブレーカーを一度落とすべきだ。 1990年代にかけ、ルールをちゃんと決めなかったためにディーラーが損切りできず、いくつもの組織が存続の危機に陥った。損失が増えると相場が反転して元に戻ればいいのだからと、わらにもすがりたい気持ちはよくわかる。人間の弱さがあるからこそ自動的に損切りをするルールが必要だ。 また、昔から「ナンピンは厳にいましむ」と語り継がれている。ナンピンとは、自分のポジション(持ち高)の価値が下がっている過程でさらに持ち高を膨らませ平均取得コストを下げる手法だ。相場が予想に反して動いたときに陥りやすい「わな」だ。いずれ身動きがとれなくなる。 ■利食いを遅らせる勇気をもて 利益を増やすコツは、利益が出てもすぐに利食わない勇気を持つことだろう。少しでも利益が出るとなかなかこらえ切れず、間を置かずに利食いたくなる。だが利食わない勇気を持たなければ、損は大きく、もうけは小さくなってしまう。 著名ディーラーのチャーリー中山(中山茂)氏にこんなエピソードがある。ドルの買い持ちで大きく含み益が出て利益を確定させたい衝動に駆られた彼は、あえてもう一度買い増した。弱気を打ち消し、自分を律するためだ。高値づかみのリスクが高くてもそうした勇気がないと、利益の最大化はできない。 ディーリングは本來、短期的な為替相場の流れに乗るものだ。ただ現在は人工知能(AI)の時代になり、短期の相場に人がかかわる余地は小さくなった。3分後に円が何円動くかに賭けるのは、コイントスと同じだ。長い目で見て相場の姿がどういう方向にいくのか、追いかけていくのが人の役割になりそうだ。(隨時掲載)

    近づくCTAの円買い転換 114円臺、勢い任せの円安に飽和感

    外國為替市場で円売り?ドル買いのモメンタム(勢い)がやや弱まってきた。 商品投資顧問(CTA)などの投機筋が主導して前日に1ドル=114円臺と11カ月ぶり安値を付け、心理的節目の115円が視野に入ってきたが、市場では「現在語られているドル買い材料は『後講釈』の域を出ず、楽観的にすぎる」との空気が殘る。CTAの一部は円買いに切り替えるタイミングをうかがっているようだ。 相場の流れに乗って順張りの戦略をとる「トレンドフォロー」型CTAはコンピューター経由で8月末以降、円売り?ドル買いの持ち高を積みあげてきた。原油高で潤ったオイルマネーが流入し米株高や米社債などのリスク資産に買いが増え、その裏返しで米債利回りの上昇圧力が強まるなか、「仕掛けるなら円売り?ドル買い」との空気が醸成された。 これにモメンタム重視の他のヘッジファンドが追隨。「グローバルマクロ」など世界のファンダメンタルズ(経済の基礎的條件)をもとに戦略を立てる投機マネーは新興國リスクなどへの警戒感を保っていたものの、相場の流れにはあらがえず、様子見の姿勢を取らざるを得なくなった。 だが、グローバルマクロなどがリスクをとることに慎重な構えを完全に解いたわけではない。 野村証券の高田將成クロスアセット?ストラテジストは「CTAの持ち高はだいぶ膨らんでいる」と指摘する。そのうえで「ちょっとしたショックでも『現実路線』に回帰し、持ち高解消に動いておかしくない」とみている。 米國はカナダやメキシコと北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で妥結した。半面、中國とは互いに追加関稅をかけ合い、歩み寄りの気配は感じられない。國慶節(建國記念日)の連休明けの中國市場は気掛かりだ。 CTAはイタリア財政問題も注視している。イタリアは15日を提出期限とする2019年の予算案を巡って歐州連合(EU)から修正を求められた。「CTAの一部はまずイタリア國債の先物やイタリア株を売り、リスク回避の局面に備えている」(外國証券の為替ディーラー)との指摘も出ている。 9月開催の米連邦公開市場委員會(FOMC)では今後の米利上げペースについて、年內にあと1回、2019年は3回、20年は1回という従來の想定が據え置かれた。パウエル米連邦準備理事會(FRB)議長は物価上昇に慎重な見方を示している。 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「日銀の追加緩和観測も強くない。金融政策の観點から円安が進む環境ではない」と話す。 上野氏はまた、「ここからの円の下落余地は1ドル=114円臺後半程度までにとどまる」と予想する。2日の東京市場でも円の下値は堅めだった。勢い任せの円安?ドル高は転換點にさしかかってきたように映る。 【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也彌】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    米1強、消去法で買われた日本株 「27年ぶり」が突きつける現実

    2018年度下半期入りした10月1日の株式市場で日経平均株価は前週末比125円高の2萬4245円まで上昇し、1991年11月13日以來約27年ぶりの高値を付けた。最高値圏にある米國株に比べ出遅れ感のある日本株を再評価する海外マネーが流れ込んでいる。ただ、消去法的な買いという色彩も濃く、上昇が持続するかどうかは見方が分かれている。 世界取引所連盟(WFE)によれば、同連盟に加盟する世界の取引所の株式時価総額合計は8月末時點で約85兆5000億ドル(約9700兆円)。このうち東京市場が占める比率は7.08%で過去10年の平均(7.2%)をわずかながら下回った。 一方、ニューヨーク証券取引所とナスダックを合計した米國株の比率は42.3%と過去10年の最高で、この間の平均値を6ポイント近く上回る。日本株の占有比率が過去に比べ極端に低い訳ではないが、米株の持ち高が膨らみすぎたことで、相対的に出遅れ感の殘る日本株に資金シフトする動きが海外勢の一部にみられる。 9月末時點の東証1部の時価総額は8月末比5%近く増えたことから、すでに世界全體に占める日本株の比率は過去平均並みの「中立」水準を回復した可能性がある。だとすると、海外勢はさらに日本株を買い続けるのか、それとも様子見に転じるのか。アセットマネジメントOneの鴨下健ファンドマネジャーは、「日本株は投資指標面で特に割安とは言えず、過去平均並みに戻れば買いは一服するだろう」とみている。 振り返ってみれば、バブル経済が名実ともに終焉し、「失われた10年」が始まった……などといわれた當時。1991年11月13日と最近の市場?経済環境を比較した。 【日本】         <1991年11月13日> <2018年10月1日> 日経平均株価         2萬4416円     2萬4245円 東証株価指數(TOPIX)    1837        1817 PER(前期実績)       38.3倍(11月末)  15.2倍(9月末) 東証1部の時価総額        369兆円(同上)   683兆円(9月末) 長期金利             5.981%       0.125% 円相場(1???=円)      129円64銭(月平均) 113円92銭(1日午前)                <1991年>     <2017年>  名目GDP            482兆円       546兆円 名目GDP(ドル建て)    3兆5844億???    4兆8721億??? マネタリーベース        37兆円(11月)   498兆円(8月)                                  【米國】         <1991年11月13日> <2018年9月28日> 米ダウ工業株30種平均      3065???     2萬6458??? 米S&P500種株価指數      397        2913 米長期金利           7.41%       3.07%                <1991年>     <2017年> 名目GDP(ドル建て)   6兆1740億???     19兆3906億??? マネタリーベース      3284億???(11月) 3兆5845億???(8月)                                  【中國】         <1991年11月13日> <2018年9月28日> 香港ハンセン指數         4240      2萬7788                <1991年>     <2017年> 名目GDP(ドル建て)     4156億???     12兆 146億??? 27年間で米ダウ工業株30種平均は約8.6倍、香港ハンセン指數は約6.6倍となり、日本株は大きく水をあけられている。國際通貨基金(IMF)のデータでは、ドル建ての名目國內総生産(GDP)は米國が3倍程度となったが、日本は3割強しか伸びていない。低成長が株価低迷につながっているという見方ができる。 【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    相場の微かな変化を見抜く by 花井健氏(シリーズ:ベテランに聞く)

    記憶に殘る外國為替ディーラーといえば誰か。問われたときに名前が挙がる日本人は少ない。その一人が日本興業銀行(現みずほ銀行)のすご腕で鳴らした花井健氏だ。現在は企業経営アドバイザーとして為替経験をいかす花井氏は現役時代、徹底的に相場に入り込み、かすかな変化も見逃さず勝ち抜いてきたとの自負がある。「周囲に『運が良い』と映っても実は地道な努力の積み重ねによるところが多い。『見抜く力』を得られるか否かが勝敗を分ける」と指摘する。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今 晶】 花井 健(はない?たけし)氏 1977年に大阪市立大商學部を卒業。興銀(當時)に入行し國際為替営業部長やみずほコーポレート銀行の本店営業第4部長、執行役員上海支店長、常務執行役員アジア?オセアニア地域統括役員を経て2009年に楽天に移籍。現在は自己勘定で取引をするとともにアシックスや丸運、日本精線、タツタ電線、LIFULLの社外取締役と複數の企業で顧問を務めるほか、母校の大阪市立大の國際交流アドバイザーとして教壇に立つ   ■「微か(かすか)なるより顕か(あきらか)なるはなし」 これは孔子の説とされ、日立製作所フェローの矢野和男氏は著書「データの見えざる手」(草思社)で「君子は微かを知るがゆえに顕かを知る」と読み替えている。現在の世の中も、見えているようで見えていないことだらけだろう。 見えていないものをそのままにしていては進歩はない。相場漬けの日々を送り、ニュースなどで表に出ていない動きやパターンの変化、構造を細かく拾う地道な作業、真の人脈作りと情報収集が必要だ。王道やマニュアルなど無く、うまくいっても「幸運」ぐらいに軽く受け止められるのかもしれないが、それが実力だと胸を張っていい。 デジタル技術や人工知能(AI)との付き合い方のツボもそこにある。AIによるデータ解析や経済指標への反応スピードは格段に進歩し、短期取引はAIやアルゴリズムの獨壇場になりそうだ。だがAIもアルゴも精度がまだ低く、相場のオーバーシュート(行きすぎ)を引き起こしやすい。流れに逆らう「逆張り」が有効な局面がしばしば生じている。判斷をするのは人間だ。 とにかくIT(情報技術)との関わりは避けては通れない。AIなどの長所と短所をしっかり把握し、取引につなげるのは人の仕事。長期投資では人間の出番が増えるだろう。人と機械の特性をそれぞれうまく活用した分業體制が理想だ。 ■性悪説でシステムを作り、性善説で人を管理する 感情に流されず欲望を前面に出さない「無心」「無我」の境地は、頭では大切だとわかっていても簡単には割り切れない。外為市場の先人は様々な工夫で無心になれるよう努めてきた。例えば元東京銀行(現三菱UFJ銀行)の若林栄四氏(現ワカバヤシエフエックスアソシエイツ代表取締役)は相場変動を「神意」とみなし「負けは神の領域に近づきすぎたから」と自らに言い聞かせ、チャートなどを駆使して淡々と敗戦処理に臨んだという。 人間が作り出す「有機質」の要素では説明できない客観的な現実がマーケットには厳然と存在する。勝てるトレーダーはそんな「無機質」の視點を必ず持っている。著名な日本人のディーラーとしてまず名前が挙がる堀內昭利氏(現AIAビジネスコンサルティング社長)やチャーリー中山(中山茂)氏はこの無機の部分、具體的にはディーリングで最も大切なロスカット(損切り)が見事だった。 上手にロスカットをして負けが込まないようにできればおのずと勝機は増える。相場は期待通りにはならない。常勝は不可能と割り切って臨んできた。 為替取引を通じて得た座右の銘は「性悪説でシステムを作り、性善説で人を管理する」。やすきに流れがちな人間に本質的な罪はない。弱い人を追い込まないようにルールを決める。あとはそれを実行に移せるかどうか。為替に限らず、事業運営の全般に當てはめられる真理だと思う。 みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)本店営業第4部長で不良債権の処理を擔當していたとき、「不良債権がある取引先の希望通りの支援を続けていたら負擔は際限なく増える。希望的観測はもたずに當初決めたガイドラインに従い、すぐに処理すべきだ」と當時の斎藤宏頭取に訴え、理解してもらってスムーズに事を運べた。 ■トライ&エラーの意識忘れず 投資はトライアンドエラーの繰り返し。當たり前のようでも、何が正しくて何が間違っているのかの判斷はかなり難しい。大事なのは謙虛に學ぶ姿勢だ。勝てるトレーダーはたいてい、貪欲に情報を得ようと食らいついてくる。 2006~07年、みずほでアジア?オセアニアビジネス擔當の常務だったときだ。アジアの中央銀行幹部は金融政策の専門家ではあっても、需給環境が複雑な為替相場にはあまり明るくなかった。そのために中銀としての運用シナリオが正しいのか見極めたいと、為替専門の私にひんぱんにアドバイスを求めてきた。円を元手にした外貨建て取引「円キャリートレード」が盛んなころで、アジア中銀もこぞって円キャリーに傾いていたからだ。 上海勤務時には中國の金融當局が円の自由化の歴史や為替管理の方法について聞いてきた。政府関係者の為替マインドの高さに感心したことを覚えている。 Once a dealer always a dealer.? Don’t worry about failure, Worry about the chance you miss when you even try!? ?「一度ディーラーを経験したらずっとディーラー、失敗を恐れるな」――。ディーラーの合言葉だ。これを肝に銘じ、年齢に関係なく身に付けられるデジタル技術力と新たな人脈を広げられる人間力、リスクをとって市場に対峙する力の「新?3種の神器」を備えられれば、相場だけでなくこの先の社會の荒波も乗り越えられると信じている。(隨時掲載)

    新種亂立、止まらぬ「オルト離れ」 Zaif問題で心理悪化に拍車

    仮想通貨市場でビットコイン以外の「オルトコイン」の需給悪化が続いている。ICO(イニシャル?コイン?オファリング)と呼ばれる仮想通貨技術を使った資金調達に伴うオルトの亂立でただでさえ需給が緩みやすくなっているところに、相次ぐハッキングによる不正流出問題で投資家離れが進んだ。そんな中で20日、國內で仮想通貨の不正流出が発覚。相場の先安観が改めて強まった。 仮想通貨交換會社のテックビューロ(大阪市)は日本時間の20日2時15分ごろ、運営する「Zaif(ザイフ)」に外部からの不正アクセスがあり、管理していたビットコイン、モナコイン、ビットコインキャッシュが流出したと発表した。 ザイフでの被害額は現時點で約67億円相當とみられ、1月にコインチェックで起きた仮想通貨ネム流出時の約580億円と比べると規模は小さいが、投資家は敏感に反応し多くの通貨が売り込まれた。 ビットコインなど市場規模の大きい通貨に打診的な買いが入り、ビットコインは下落前の水準である1ビットコイン=6300~6400ドル臺のレンジに戻っている。半面、小規模オルトコインの下げはきつい。情報サイトのコインマーケットキャップを見ると、オルトには週間の下落率10%超えのコインがごろごろしている。 「國內外で頻発する不正流出を受け、交換會社はとりわけオルトコインの取り扱いに慎重にならざるを得なくなった」。そう危機感を抱く市場関係者は多い。 海外では悪意を持ったマイナー(採掘者)がマイナーの少ないオルトコインを狙ってブロックチェーン(分散型臺帳)を書き換えてコインを盜み出した事例が増えている。セキュリティー面で脆弱なコインには上場廃止になったものも現れた。 日本國內での仮想通貨交換業には金融庁への登録が必要でコインチェック事件後は事実上、登録停止となっていた。最近になって登録再開の可能性も噂されていたが今回の問題を受け、「金融庁による交換所の登録再開は先送りされかねない」とアルトデザインの藤瀬秀平チーフアナリストは危懼する。 取り扱う交換所が増えなければオルトコインの流通市場の裾野拡大は見込めない。仮想通貨の時価総額全體に占めるオルトの比率は5月以降は下がるばかりで、その裏返しでビットコインの比率が上昇。足元では55~58%程度と昨年12月以來の水準まで高まっている。 ICOが盛んなロシアやスイス、エストニアなどでは現在も新たなオルトコインがどんどん立ち上がっている。その種類は2000近くまで膨れあがった。 アルトデザインの藤瀬氏によると、仮想通貨の市場全體の時価総額はピークだった年初比で4分の1だが、コイン増加により、1通貨あたりの時価総額は6分の1まで減っている。オルトコインの大部分がほとんど取引されていない狀況のようだ。投資家の「オルト離れ」が止まる兆しはみえない。 【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也彌】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

    流動性低い通貨には手を出すな by 若林徳広氏(シリーズ:ベテランに聞く)

    投資に必勝法などはなく、ミスを極限まで減らすことこそ勝利への近道。その鉄則に忠実に従い、相場の荒波を乗り越えてきたのが外國為替ディーラーのバート若林こと若林徳広?ステート?ストリート銀行東京支店長だ。若林氏は「相場観を間違えてもすぐに気づけば十分立て直せる」と指摘し、そのうえで「流動性」の大切さを訴える。「トルコリラのように相対的に流動性が低い通貨には手を出さぬ割り切りも必要」と説く。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今 晶】 若林徳広(わかばやし?とくひろ)氏 東京都出身。セント?メリーズ?カレッジ?オブ?カリフォルニアを卒業後、東京で外國為替のキャリアをスタート。以後トロントやシドニー、香港で勤務した後、2000年にステート?ストリート銀行に入行し東京支店の金融市場部部長や香港支店の外國為替営業部長を経て現在にいたる   ■どんな荒れ相場でも変わり身早く プロとして生き延びてきた人はともかくミスをしない。ミスをしないとは、相場観やポジショニングを間違わないとの意味ではない。誤解を恐れずにいえば変わり身の早さだ。読みが外れてもすばやく気持ちを切り替えて流れに乗り、相場が上げても下げても収益を得る。トライ?アンド?エラーを続け、経験を積んでミスを防げば収益拡大の好機はいずれ訪れる。 2008年のリーマン?ショックや12年にかけてのギリシャ危機、16年の英歐州連合(EU)離脫(ブレグジット)決定と米大統領選でのトランプ氏當選後など金融市場が大荒れとなった時期を最前線の為替ディーラーとして過ごしてきた。相場が激しく動いているときはどこが適正水準かの見極めはほぼ不可能だ。それでも顧客や他のディーラーから価格提示を求められたらレートを出さなければならない。そんな中でミスなく注文をさばいていく力を付けていった。 若いころに野球をしていたので、1つのミスが試合全體に及ぼす悪影響の大きさは身にしみている。相場も、利害が異なる多數の參加者がせめぎ合うスポーツのようなものだ。ミスばかりしていては絶対に勝てない。 電子トレーディングシステム(EBS)が普及するまでは人間のブローカーがスピーカー経由で流す聲を聞き、専用回線を通じてトレーダーとブローカーが取引していた。ブローカーの聲色から大量の注文が入っているのか相場が荒れているのか、商いが厚いのか薄いのかだいたい推測できた。一方、デジタル全盛のいまは値段をコンピューターのモニター畫面で見る時代。無機質な數字には感情がこもらない。相場の風向きを把握するのは難しくなっている。 足元ではコンプライアンス(法令順守)の制約もある。ディールはどうしても守りに入りがちだが、ミスの原因を減らして変化に対する感度を高められれば優位にたてる。 ■トルコリラ急落は起こるべくして起きた アルゴリズムなどの高速取引が存在感を増している。機械がひとたび反応するとごく短い時間で巨額のお金が行き來し、相場の振れが大きくなりやすい。 ここで重要なのが取引の自由度をあらわす「流動性」だ。流動性が低いと市場の混亂時に機動的な持ち高調整が難しく、思わぬ損失につながりかねない。流動性が乏しかったら手を出さないぐらいの割り切りがあっていいと思う。 8月にかけて急落したトルコリラにも同じことが言える。主要20カ國?地域(G20)メンバーでもあるトルコの市場規模はかなり大きく、リラの平時の流動性は問題ない。ただ先進國通貨に比べると足の速い投機資金の割合が高い。いざというときの流動性はだいぶ下がると考えられる。少なくとも相場が一定期間、一方向に振れ続けているときは急激な反動のリスクを意識すべきだ。 日本では低金利環境が長引いているため、トルコリラのような金利の高い通貨の需要は根強い。外為証拠金(FX)投資家を中心に持ち高は円売り?リラ買いに傾いてくる。半面、そのことを海外勢はよく知っていて、損失覚悟のリラ売りを行使させようと攻めてくる。流動性の問題と持ち高の偏り。7~8月にかけてのリラ安加速は起こるべくして起きたのだろう。 バブルやその崩壊時期の見分け方についての研究はまだ進んでいないが、場數を踏んだ金融機関は傷を最小限に抑えるためのノウハウを蓄積している。収益を上げるには、ある程度はリスクをとって動かざるを得ない。ここでも、いかにミスを減らすかの重要性が強調されているはずだ。(隨時掲載)    

    eスポーツ普及元年、関連株もスイッチON ゲームショウ20日開幕

    國內最大のゲーム見本市「東京ゲームショウ」が20日に開幕する。スマートフォン(スマホ)ゲームやVR(仮想現実)など見どころはたくさんあるが、なかでも注目はビデオゲームでスポーツのようにユーザーが腕を競う「eスポーツ」だ。昨年も話題を集めたが、今年は出展エリアがより拡大して一段の盛り上がりが期待される。 近年は會場だけでなくスマートフォン(スマホ)を通じたネット動畫で観戦を楽しむ人も増えている。海外を中心に高額賞金の大會が増えていることも參加者のレベル向上や、観戦者數の増加につながっている。インドネシアのジャカルタで8月に開かれたアジア競技大會でeスポーツは公開競技になった。 総務省がまとめた「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」によると、eスポーツの2017年の世界市場規模は700億円程度だが、21年には1700億円程度に拡大するとの見方が紹介されている。國內の市場規模は17年時點で5億円未満にとどまっており、成長余地は大きい。これまで米國や韓國、中國が先行してきた分野だが、市場では「五輪の正式種目に採用されるとの期待があり、國內でも世間一般に評価されるようになる可能性は高まっている」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との聲が聞かれる。 関連銘柄は少なくない。ゲームメーカーはソフトの開発はもちろんのこと、コナミホールディングス(9766、グラフ青)は強みを持つ野球コンテンツでeスポーツのイベントを実施していく。カプコン(9697、グラフ赤)も格闘ゲームのeスポーツ大會といった関連イベントを積極開催する方針を示すなど、単にソフト販売にとどまらない力の入れようだ。 eスポーツは畫面上の相手の動きを素早くとらえて的確に反応できるかが勝敗を分けるため、高性能の液晶モニターやマウスなど関連機器も重要になる。アイ?オー?データ機器(6916)やエレコム(6750)にとって商機につながるほか、関連機器を販売する家電量販店も潤うだろう。 通信業界にも恩恵を與えそうだ。NTTドコモ(9437)は次世代通信方式(5G)技術を用い、スマホに絞ったeスポーツイベントを10月に開催する。同社は「今はまだパソコンなどを使って戦うプレーヤーが多いが、次第にスマホが増えて5G技術の活用が増える」(コンシューマビジネス推進部)とみる。KDDI(9433)は5G技術の普及を見據え、eスポーツの競技団體である「日本eスポーツ連合」と8月に公式スポンサー契約を結んだ。 eスポーツで出遅れたとはいえ、任天堂(7974)の「ファミリーコンピュータ」や「ニンテンドーDS」、ソニー(6758)の「プレイステーション」が世界を席巻した「ゲーム先進國」でもある日本。市場成長に弾みがつけば、本格參入する企業も相次ぐ公算が大きい。 【日経QUICKニュース(NQN) 內山佑輔】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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