• アボガドから電気自動車まで、存在感増す中國の消費者 HSBCリポート

    HSBC中國の社長兼CEO(最高経営責任者)のデイヴィッド?リャオ氏が、存在感を増している中國の消費者についてリポートします。 ■新世代と消費の洗練 中國において消費者の味覚は急激に変化しています。7年前には中國のアボカドの輸入量は約30トンに過ぎず、中國の食卓に滅多に上がることのない、中米原産の果物で変わった食材でしかありませんでした。 しかし2017年になると、チリやメキシコ、ペルーから中國が輸入したアボカドの量は3萬2200トンと、アボカド?トースト2億食分をまかなうのに十分な量に達しています。 中國のニューリッチの贅沢さや、スイスの高級時計からデザイナー?ハンドバッグ、スーパーヨットまであらゆるモノへの並外れた影響については近年多く語られてきています。しかし、中國は単に「クレイジー?リッチ!」(2018年公開の米國映畫)の國ということだけではなく、富が都市中心部から地方の中核地域に波及するにつれ、インターネットに精通し聡明でより高學歴の新世代が中心となり、消費がさらに洗練され包括的になっていることはあまり認識されていません。 保護主義の高まりや貿易摩擦により世界中で企業にとっての不安が増すなか、今こそ國際的企業はこうした新しい消費者と商品需要をけん引するその潛在力に目を向けるときなのです。 中國がグローバル企業にとって重要なターゲット市場であることに疑問の余地はありません。公式推計によると、中國は2018年から2022年の5年間に8兆米ドル相當の商品を輸入するとみられていますが、これは1年當たり平均1兆6000億米ドルに上り、昨年のカナダまたは韓國のGDPにほぼ匹敵します。 ■中國、世界の商品が向かう市場に 訪日する中國人の數も増加し続け、中國人旅行客の數は他國を上回っています。経済産業省の平成29年度の「電子商取引に関する市場調査」によると、中國でクロスボーダー(國境を越えた)電子商取引を用いて日本の商品を購入した買い物客の40.4%が、過去の訪日時に買ったお気に入りの商品を再度購入したと答えています。 日本の企業から中國の消費者がクロスボーダー電子商取引を通じて購入した総額は前年の1兆366億円から25.2%増加して1兆2978億円に上りました。 HSBCの「ナビゲーター?レポート」によると、加工用の中間財および増加する中國の富裕層を満足させる最終財の雙方の需要を反映し、2017年から2030年の間に中國の財貨輸入は平均で年間約8%増加すると予想しています。中國はすでに日本の第2位の輸出相手國です。2030年までに中國は米國に代わり日本の最大の輸出市場になると予想されています。 これは中國が輸出および國家主導型の投資にもとづいた成長から脫卻しつつ、その14億人もの人々の消費を一層促進しているということです。「メイド?イン?チャイナ」商品が全世界の市場に向けて輸出されるという古いモデルは、逆に中國自體が他のどこかで作られた製品が向かう先になるというモデルにゆっくりと、しかし著実に移行しているのです。 このリバランスの兆しは、上海でまもなく開催される中國國際輸入博覧會(CIIE)にみられます。過去において中國で開催された展示會は中國企業の世界に向けた輸出に関するものばかりでしたが、それとは対照的に、このイベントは外國企業による中國市場での販売を目的としたものです。11月5~10日の6日間にわたり、數十萬平方メートルもの展示スペースが國際的な出展者に提供され、食品から醫薬品、家電、自動車などの製品が展示されます。 ■可処分所得、40年で100倍 中國政府が経済改革に著手し、外國投資家に國を開放して以來40年の間に拡大してきた購買力が企業を引き寄せています。2017年には都市部世帯の一人當たり可処分所得は3萬6396元(5600米ドル)となり、1978年當時の100倍に達しました。また、農村部世帯の所得も増加しています。 こうした中國の消費者は単に豊かになってきただけではありません。マッキンゼーのレポートによると、中國の消費者はより健康志向で、環境に配慮しており、ブランドや購入する物の品質についてますます意識が高くなっています。 アボカドに象徴されるこのような中國の消費者の嗜好の変化に企業は気づき始めています。 2008年に撤退し、昨年中國に再參入したタコベル(Taco Bell)は、余計な脂を削減し、より健康的なアボカド?ブリトーを新たな中國の第1號店舗で販売しています。上海だけでも、現在では160店舗以上のレストランでスマッシュド?アボカドを載せたトーストが提供されています。これは、西洋のミレニアル世代の間で人気が出たことにより有名になったメニューです。 スターバックスは中國でコーヒー愛飲者が増加したことにより、同社の最大市場が米國から中國に代わるとみており、テスラも2025年までに世界の電気自動車販売臺數の約半分を購入すると予想されている中國のドライバーをターゲットにしています。 さらに電子商取引の拡大もあり、消費の裾野が広がってきています。アリババやJDドットコムなどのプラットフォーム運営企業が、裕福な沿岸地域から內陸部の比較的小規模な都市や町まで世界中の商品を屆けています。最近では、奧地の農村地域の消費者でも、村に拠點を置く貨物倉庫やオート三輪またはドローンを使ってブランド物の粉ミルクやオムツを赤ん坊のために購入することが可能です。 ■長期的に潛在力は大きく 確かに、中國のように巨大で複雑かつ急速に進展している市場に売り込むには困難が伴います。 経済が成熟するほど、所得はかつてほど急速に増えるものではありません。そして現在の貿易摩擦が企業や消費者心理に悪影響を及ぼすことは言うまでもありません。 そのうえ、外國企業は変化し続ける消費者の嗜好と、電子商取引とデジタル?ペイメント?ツールの目まぐるしい急速な発展に対応する必要があります。また、俊敏でハイテク化の進んだ現地企業との激化する競爭にも備える必要があります。テスラの場合、「中國のテスラ」を目指してしのぎを削る數多くの現地の電気自動車企業と競合しており、コーヒー業界では北京に本拠を置くラッキン?コーヒーが設立から1年足らずのうちに何百店舗をも開店し、スターバックスを脅かしています。 しかし、こうしたことは14億人の消費者が全世界の輸出企業の対象となる、極めて大きな長期的潛在力を弱めるものでは決してありません。上海のカフェでブランチを楽しんでいるミレニアル世代から湖南省の村でオムツが屆くのを待っている子育て世代に至るまで、中國の消費者はより一層裕福に、そして見識も豊かになっています。かつてないほど中國の消費者は企業にとって、最も重要なターゲット市場となっています。それが世界中の輸出企業が11月に上海に集う理由であり、國際的に収益を拡大したいすべての企業が、すぐに中國に參入すべき理由なのです。 本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判斷と責任で行って下さい。株式會社QUICKおよび情報提供元であるデイヴィッド?リャオ氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付隨的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

    ベトナムのM&A市場活況、経済成長が後押し HSBCレポート

    HSBCベトナム ホールセール?バンキング統括責任者のウィンフィールド?ウォン(Winfield Wong)氏が、活発なベトナムのM&A(合併?買収)についてリポートします。 ■過去最高の案件數、FTAも好機に 2017年に過去最高の案件數を記録したベトナム國內のM&Aは、投資家の旺盛な投資意欲にけん引されて一段と伸びようとしている。力強いGDP成長、良好な人口動態、そして國有企業を株式會社化する計畫が豊富に控えていることなどが投資環境を後押ししている。投資家はベトナムが抱えるいくつかの課題をこれまで以上に十分に認識する必要があるが、好機を捉えるためには素早く行動するべきであろう。 ベトナムはアジア地域で最も活発なM&A市場の一つである。2017年の取引金額は、前年比175%増加して102億米ドルに達した。代表的なものとして、タイの飲料最大手タイ?ビバレッジが國営ビール大手サイゴンビール?アルコール飲料総公社の株式の54%を48億米ドルで取得した案件や、シンガポール拠點の自動車販売會社ジャーディン?サイクル?アンド?キャリッジが乳製品製造大手ビナミルクの株式の8%を9億米ドル超で取得した案件が挙げられる。2018年も勢いは持続し、1~6月の取引金額は35億5000萬米ドルに達して前年同期比155%増となっている。 さらにベトナムのM&Aは、大規模案件の成立と案件數の増加にとどまらず、一段と深く広範に進展している。昨年は消費財や小売、インフラ、不動産、鉱工業といった広範なセクターにおいてM&A案件數が過去最高に迫った。 成功をけん引している要素として、まずベトナムの堅調なマクロ経済がある。2017年の経済成長率は前年比6.81%に達し、2018年と2019年の成長率はいずれも同6.7%と予想される。ベトナムは世界で最も速いスピードで成長している経済圏の一つである。この力強い経済を支えているのは中間層人口の急速な増加であり、ボストンコンサルティンググループは2020年までにベトナム國內の中間層は倍増し3300萬人に到達すると予想している。 政府が多くの國々と自由貿易協定(FTA)を結んだことも好機を生み出し、投資家はベトナムへの投資に一段と前向きになっている。 ■待ち受ける400社あまりの民営化 さらに、政府が積極的に國営企業の民営化を進めていることがM&A増加の最も重要な要因であることは間違いない。 政府は國有企業株式の取得を投資家に促している。政府計畫では、財政収入の増加と政府支出の削減を念頭に400社あまりの國有企業の株式を売り出すことになっている。建設やテクノロジーといった業種への一段と多岐にわたる投資機會が提供されることになる。 國有企業の民営化案件をテコにM&A市場の発展が加速すれば、ひいては外國人投資家の増加を通じてベトナム企業のガバナンスが向上することにもなる。世界銀行が世界190カ國?地域の起業のしやすさなどを順位付けするビジネス環境ランキングの2018年版で、ベトナムは2017年版から順位を14位上昇させて68位に躍進。これは外國人投資家の増加が寄與したと考えられる。 2017年はベトナムのM&A市場でタイ企業の活動が特に活発だった。HSBCはタイの投資家が參加した最大級の案件の數多くで主導的役割を果たした。具體的にはフランスの流通大手カジノ?グループのリード?ファイナンシャル?アドバイザーを務め、大型スーパーのBig Cベトナムをタイ最大の流通系コングロマリットのセントラル?グループに11億米ドルで売卻する案件を主導した。また同じくタイのサイアム?シティ?セメントがスイスの建設資材大手ラファージュホルシムのベトナム事業の65%を取得する案件では、サイアム?シティ?セメント側のファイナンシャル?アドバイザーを務めた。取引金額は8億7500萬米ドルと、ベトナムの建設資材セクターでは過去最大の案件となった。 ■標準ルールづくりや情報開示、規制緩和などに課題も このようにベトナムに対する投資環境は進歩している一方で、投資家は引き続き多くの課題に直面している。 現在のベトナム政府は、國有企業の民営化の成功事例などから色々なことを學んでいる段階で、標準的なルールや手法はまだ定まっていない。理由の一つは、民営化の戦略的目標と目的がそれぞれの國有企業ごとに異なるからである。 ベトナムでのM&Aにおいて、得られる情報は先進國市場と常に同水準とは限らない。投資家は買収先のバリュエーションの確認を十分に行うことも必要である。幸いベトナム政府はこうした投資家の懸念に配慮し、取引プロセスの合理化や情報の利便性向上、規制緩和などに取り組んでいる。 グローバルな投資家の中には、ベトナム國內の投資家とチームを組んで投資する戦略を進める動きもある。また投資家は、國內市場に十分な地歩を築いて総合的なサービスを提供できる銀行を選ぼうと考えるだろう。 ベトナム市場に長く関わってきたHSBCは、M&Aアドバイザリーや買収ファイナンス、キャッシュ?マネジメント、カストディをはじめとする銀行サービスの全てを包括的に備えており、投資家の要求を十分に満たすことができる立場にある。さらにHSBCはベトナム市場を深く理解しており、投資家が現地の規制を把握する際に手助けしたり、現地のステークホルダーと取引を進めたりするうえで優位な立場にいると自負している。ベトナムのM&A市場で2014年から17年まで、M&Aアドバイザリー業務を提供する銀行として首位に立ったのは、長い年月をかけて獲得した専門知識の賜物だ。 様々な課題があったとしても、ベトナムでの投資機會が損なわれることはない。ベトナムが投資対象として最も躍動的で刺激的な市場であることは、皆が認識している。ベトナムのM&A活動が今後數年にわたって、ますます活発になることは確実である。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

    インフラ投資、成長と環境の両輪で アジアの役割大きく HSBCリポート

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回はHSBCセンター?オブ?サステイナブル?ファイナンスのマネージング?ディレクター、ゾーイ?ナイト(Zoё Knight)氏が世界で求められるインフラ投資についてリポートします。   ■自然災害、気候変動への対応は待ったなし 昨年は、世界各地で天候に起因する自然災害が重なり、社會や経済に打撃を與えた年として記憶に殘る1年となった。米國はハリケーン「ハービー」、中國南部は臺風「ハト」、そしてアイルランドと英國はハリケーン「オフィーリア」に襲われ、また山火事が米國カリフォルニア州やスペイン、ポルトガルで猛威をふるった。さらにインドやバングラデシュ、ネパールでは洪水で大きな被害が発生した。 これらの自然災害が警告するところは明らかである。気候変動がもたらす影響は苛烈なものであり、多角的な対応策を世界全體で早急に講じる必要がある。 極めて難しい課題だ。多くの科學者の指摘では、世界の気溫上昇を産業革命前に比べ2度以內に抑える必要がある。そのためには、過去1世紀半にわたって築き上げられてきた數多くの経済活動を見直し、再構築しなければならない。工場や発電所では二酸化炭素排出削減が求められる。建築物や都市全體のエネルギーや水の活用効率を向上する必要がある。輸送とエネルギーのシステムは化石燃料から脫卻する必要がある。さらに道路やダム、住宅、通信網を、頻発する激しい嵐や海面上昇に耐えられるものにしなければならない。 こうしたシフトの対象がまさにインフラであり、インフラ投資について現在下されている決定が今後數十年にわたる気候変動との戦いにおいて重要な意味を持つことになる。インフラ計畫の多くは完成までに數年を要し、中には數十年かかるものもある。従って、単純に現在の世界情勢に合わせて事業や投資の計畫を立てるべきではなく、気候変動のシナリオを考慮し、今後15年、20年あるいは30年先の將來を見據えて二酸化炭素削減の必要性を織り込んでいくことが極めて重要である。 いずれにせよ、世界全體がインフラ投資を必要としているのは事実だ。世界経済は絶え間なく進歩し、労働者と企業の生産性向上が常に求められる。地方から都市部へ移動する人の數はますます増加している。アジアやアフリカをはじめ世界の多くの地域で人口は増加している。こうしたあらゆる背景から、より多くのエネルギーや輸送、住宅、通信網やITネットワークへの需要が著実に生まれている。 ■今後15年で100兆ドル規模が必要に 今後のインフラ投資は2つの課題を満たせるような形で実施することが求められる。すなわち生産性を向上させ経済成長を実現させるだけでなく、並行して炭素ガス排出の最少化を目指す方法に基づいて経済や社會を気候変動の影響に適応させていくことになる。 そこには相応の費用が生じる。古いシステムの刷新と成長促進という2つの目的を果たすためには、世界全體で、今後15年間で100兆米ドル規模のインフラ投資が必要になるだろう。さらに將來的に気候変動の影響に対応する費用がこれに加わることになる。インフラの原型が環境に配慮した「グリーン」なものである方が將來的にプラスだ。 おそらく最も喫緊で、かつインパクトの大きい変化が求められているのはエネルギーインフラである。発電と送電を擔う電力システム、そして電力を消費する側の交通システムや建築物、都市と同様2つの課題に対応しなければならない。まずは太陽光発電や風力発電等の低炭素型の代替エネルギーを利用するなどして、電力の消費あるいは浪費を抑えて排ガスを削減していく必要がある。次に気候変動の影響への対応力をより高めなければならない。 幸いにも、足元では建設セクター、そして再生可能エネルギー開発の分野の技術やプロジェクトに向けて投資マネーが次々と流入している。 この変化の過程でアジアが果たす役割は大きい。都市化や人口成長、持続的な経済拡大を背景に、アジアは今後數年間の世界全體の需要増加の約60%を占めると考えられる。溫室効果ガスの排出量においてそれぞれ世界第1位と第3位を占める中國とインドは、いずれもグリーン経済を目指して本格的な取り組みを進めている。例えば、インドには2022年までに175ギガワット(GW)の電力を再生可能エネルギーから生み出す計畫がある。また中國は太陽光発電、風力発電、電気自動車の分野ですでに主導的立場にある。 ■民間マネーの活用が不可欠 このような世界的なエネルギーシステムの移行に要する莫大な費用を、公的部門だけで賄うことは難しく民間資金の活用が重要になる。HSBCが昨年9月に発表した委託調査によれば、世界各國の機関投資家の3分の2あまりが低炭素や気候に関連する事業への投資拡大の方針を示している。 日本では昨年、世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用獨立行政法人)が、環境?社會?企業統治(ESG)に配慮している企業で構成される3つの日本株指數を選定し、この指數に連動したパッシブ運用を合計1兆円規模で開始したと発表した。日本國內ではESG投資が注目され、より多くの機関投資家が企業に対して環境問題に取り組むことを要求している。また日本政府は國內企業に、事業と戦略にSDGs(持続可能な開発目標)を織り込むことや、都市化や気候変動から問題が生じている諸外國に向けてその問題に対処するための質の高いインフラや先進技術を輸出することを促している。 人口増加、都市化、経済発展、生産性向上、そして気候変動と、世界各國の政府はさまざまな課題への対応を迫られている。こうした課題に解決する共通の鍵となるのは、二酸化炭素排出が少なく効率性に優れ、また世界的な気溫上昇によって將來発生する可能性のある物理的影響に適応するためのインフラである。直近の技術進歩によって環境に配慮した「グリーン」な選択肢は単に環境面だけでなく、経済的そして経営的な面からも意義のあるものとなっている。ただし早急に行動を起こす必要がある。將來の問題を最小限に抑えるためには今日決斷することが極めて重要である。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

    改革開放40年、中國経済の「これから」(HSBCリポート)

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回はHSBCグループ香港上海銀行副會長兼チーフ?エグゼクティブのピーター?ウォン(Peter Wong)氏が40周年を迎える中國の改革開放についてリポートします。 人の一生と同じ時間軸の中で、中國は農業共同體による農民中心の國から最先端のデジタル技術と消費が主導する大國に変貌を遂げた。これはスマートフォンを財布代わりに利用する消費者がけん引した変化である。 今年中國は、経済改革と開放に舵を切ってから40周年を迎える。千里の道も一歩からという諺(ことわざ)があるが、まさに1978年12月18日に中國は開放政策を取り入れ國內経済の運営と方向性を転換させることを宣言してその第一歩を踏み出した。 それ以來、中國の経済運営は、かつての厳格な中央統制の下で國家が主導する輸出主體の経済から市場の役割を高めた內需主導の経済へと発展してきた。 過去40年間の中國の國內総生産(GDP)成長率は平均で年率10%であり、同期間の米國のGDP成長率の3倍を記録している。また一人當たりGDPは1978年當時の156米ドルから2016年には8123米ドルまで増加し、8億人を超える國民が貧困を脫した。2016年の米國の一人當たりGDPが5萬7638米ドルであることと比較すれば、中國には今後一段の成長余地がある。 現在すでに中國の経済規模は購買力平価ベースで世界最大である。また工業製品輸出と外貨準備高も世界最大である。さらに中國はグローバリゼーションや気候変動対策において主導的役割を擔うことを積極的に目指している。こうした目覚しい実績の全ては、中國の経済と社會の弛まぬ努力と広範な変革によってもたらされたものである。 ■改革開放からグローバルな役割への旅立ち 中國は、かつて國內経済の基盤だった農業の集団生産化を改めることで経済の不均衡を是正する取り組みに著手した。それには農業に契約責任制を導入することなどが盛り込まれ、農業従事者は集団で生産するのではなく土地ごとに割り當てられた収穫高を上回る生産高を達成すれば、その超過部分を獲得することができるようになった。また中國政府は郷鎮企業というシステムを確立した。それをきっかけに食品やその他の消費財の供給が格段に増加し、國內経済の活力と事業環境は大きく変化していった。地方の改革は中國の將來の経済成長やグローバル経済へ參加するための基礎となるものである。 1980年代には中國は國際貿易を拡張し、外國から國內への対內直接投資(FDI)を解禁した。1980年に深セン、珠海、廈門、汕頭の4つの経済特區が設けられたことがそれを最も端的に表している。 経済特區は外國資本の誘致や改革実験の推進、輸出主導の経済の創出において成功を収めている。1991年の中國へのFDIは43億7000萬米ドルだったが、それ以降中國へのFDIの絶対額と比率は大幅に上昇し、2016年には1260億米ドルに到達している。 さらに中國は沿岸や國境沿いの都市、內陸部の主要都市を徐々に開放し、最終的にはその他の都市も開放している。それにより先進國経済圏の労働集約的な製造業が中國に引き寄せられてきた。現在では経済特區モデルが11の新しい自由貿易試験區に発展し、サービス業やイノベーションの改革をはじめとする將來の國家的改革の試験場として機能している。 中國の経済システムの変更を目指す主要局面では國有企業(SOE)のガバナンス(統治能力)が改善され、価格の段階的な自由化や財政の分権化が進み本格的かつ近代的な銀行システムが確立されている。 SOE改革は企業の自主性の拡大を目指すものであり、政府の干渉を抑制して市場體制を創り出し民間企業間の競爭により多くの産業を開放することで、管理された計畫経済から価格主體の市場経済に転換していくものである。 SOE改革のプロセスは現在もなお進行中である。さらに中央政府は國有セクターの合理化と近代化を通じて世界で競爭できるコングロマリットを創設する取り組みを続けている。この改革には、組織再編や経営統合、余剰生産能力の削減、労働者の移住などへの対応が盛り込まれている。 中國は2006年末までに金融市場への外國資本參入を自由化するとの約束を世界貿易機構(WTO)と交わし、2003年末から金融市場の改革を加速させてきた。その改革の焦點は銀行、証券、保険といった中國の金融サービスの主要分野に絞られていた。その過程で銀行の資本構成の多様化やガバナンスの向上、プルーデンス規制の導入、國有銀行の株式會社化などが進められ、また主要な証券會社は再編され保険セクターの改革も進展した。 中國は、國內の経済資源の配分を改善するためには高度に機能する金融システムが重要であることを認識している。そのため中國政府はこの數年間に數多くの改革に著手してきた。依然として中國人民銀行が基準金利で金利誘導を行ってはいるものの、銀行の預金金利と貸出金利は現在すでに完全に自由化され、今や商業銀行はこれらの金利を自由に設定することができる。また、2015年5月から明確な預金保険プログラムが導入された。 改革のもう一つの側面は、中國の「走出去(海外進出推進)」政策に焦點が當てられている。 國內の資本取引についても、中國當局はQDII(適格國內機関投資家)やQFII(適格海外機関投資家)といった厳格な管理プログラムを通じて慎重かつ緩やかではあるものの過去40年にわたって開放を進めてきた。さらに、香港市場と本土市場の間で株式取引と債券取引をつなぐストックコネクトとボンドコネクトが先に実現したことで海外から中國の資本市場へ參加する動きは拡大している。 中國の資本取引の自由化は実際の數字にも表れてきている。現在の中國は世界第2位の株式市場を擁している。國內株式市場の時価総額は2003年時點の5130億米ドルから2017年10月には17倍の8兆7000億米ドルに成長した。債券市場もすでに世界第3位の規模に達した。 人民元の國際化にもすでに大きな進展が見られている。わずか10年前までは人民元の利用は中國本土にほぼ限定されていたが、現在では中國の貿易全體の10%超が人民元建てで決済されている。また様々なクロスボーダー取引を通じて海外投資家が中國本土の株式や債券を購入することが可能になった。 人民元が準備通貨としての役割を果たす事例も徐々に見られるようになってきた。人民元は2016年10月1日に國際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)構成通貨に正式に採用され、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの仲間入りを果たしている。世界各國における人民元建ての外貨準備の合計は2016年時點で850億米ドルと全體の0.78%だが、人民元に投資する世界の中央銀行の數は2013年時點の3行から2017年には45行に急増した。さらに昨年にはMSCIが、中國A株をエマージング?マーケット指數とMSCI ACWI指數に今年6月から組み入れることを発表している。 中國はこれまで40年にわたって主にFDIの受け手であったが、現在では大規模なFDIの出資者でもある。1999年に始まった走出去政策の下で、中國の金融関連以外の対外直接投資(ODI)は2000年時點の10億米ドル未満から2016年には1700億米ドルまで急増している。 また中國は、壯大な「一帯一路構想」を支えるアジアインフラ投資銀行、新開発銀行、シルクロード基金といった數千億米ドル規模の資本を有する國際的金融機関や基金の創設も先導している。こうした機関や基金によって、2016年から2030年にかけてアジアの開発途上國で26兆米ドルのインフラ資金ニーズが満たされることになるだろう。 ■移行の新時代 中國は「改革開放」の取り組みにより、消費や革新、グリーンエネルギーが主導する新しい経済成長の時代に踏み出すことが可能になった。 変化はすでに現れている。內需が著実に拡大する中で2017年は最終消費支出が経済成長の58.8%を占め、その比率は5年前から4%ポイント近く高まっている。サービス?セクターで創出された価値はGDPの52%を占め、この比率も5年前から6%ポイント上昇した。 拡大する中間層と、より自由な消費活動をする若いデジタル世代の消費者にけん引される中國は、デジタル技術と革新において世界をリードする存在になってきた。昨年に中國國內でインターネットへのアクセスを持つ人口は7億7200萬人に達し、歐州全體の人口を超えた。今や中國は世界のどの國よりもEコマースが活発な國になった。世界全體のEコマース取扱高の42%を占めるほか、世界で最も成功しているテクノロジー新興企業の3分の1以上を擁し、モバイル決済の取扱高は米國の11倍にもなっている。 ただし今後については大きな課題もある。約40年前に膨張する人口に対処するべく大膽な政策を実行した中國だが、現在は人口の高齢化に対処しなければならないという課題を抱えている。従って保険、醫療、介護、資産運用などの分野の需要が一段と増加するとみられ、そのために多様化した金融システムが必要になるだろう。さらに経済を持続可能かつ環境重視型にすることが、國民や環境のためばかりでなく長期的に持続可能な経済構造のためにも極めて重要になってきた。 世界の貿易と投資をけん引する原動力として、中國はアジア経済成長の中心的な役割を擔いつつアジア地域內の連攜を一帯一路構想によってさらに強めようとしている。それによりアジアは2050年までに世界全體のGDPの約52%を生み出す存在になると推計され、世界経済の中心的な存在になっていくと考えられる。従って中國は將來、あらゆる側面で米國を凌駕する世界最大の消費者市場と経済規模を有する存在になるだろう。   ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

    加熱する半導體投資 メモリ市場を価格競爭の嵐が襲う

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域のアナリストや記者の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は臺灣の現地記者、李臥龍(リー?ウォーロン)氏が加速する世界の半導體大手の増産投資とその影響についてレポートします。 韓國サムスン電子、SKハイニックス、東芝、米マイクロン?テクノロジーのメモリー半導體大手4社が生産能力拡大に再び著手した。時期を同じくして、中國大陸の大手ファンドと同國半導體大手の紫光集団もメモリー事業への資金と人力の投入を強化する。市場調査機関は、來年にメモリー市場が再び激しい価格競爭の嵐に巻き込まれることになると警告。NAND型フラッシュメモリーの供給過多の狀況がDRAMよりも深刻なものになるだろうと警鐘を鳴らす。 サムスン電子は、今後3年間で70億米ドル(約2045億臺灣ドル)を中國大陸の狹西省西安市でのNANDの生産能力拡大に投じると昨年8月に発表。先月末に新工場の起工式を正式に行った。今回の投資は、すでに発表済みのDRAM増産に続く重要な投資案件であり、世界のメモリー市場に再び衝撃を與えるものとなる。 西安にあるサムスン電子のメモリー工場は現在、主にNAND製品を生産している。新工場の竣工後、同社の西安におけるNANDの月産能力は現時點の12萬枚から、20萬枚へと67%拡大する。  今回の工場拡張案をめぐっては、かつて韓國の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件を受けて中國が韓國に経済制裁を課したことから、韓國政府が同社に対して、西安への投資を再検討し韓國での投資を最優先にするよう求めていた。サムスン電子は韓國政府の期待に応え、韓國での半導體生産受託事業とDRAMへの投資を決定した。この投資案には、韓國の華城工場16號生産ラインを従來の2次元(2D)NAND生産からDRAM生産に改造することも含まれた。また、平沢工場での新たなDRAM生産ライン設置も決定した。同生産ラインの第1段階の生産能力は今年下半期(7~12月期)に投入される予定だ。 メモリー業界の関係者は、サムスン電子の華城工場と平沢工場におけるDRAM増産の市場への影響が今年年末に現れるとみている。2つの新工場のDRAM増産分は予測ベースで月間約23.5萬枚にのぼる 。一方、韓國の大手メーカーであるSKハイニックスも中國江蘇省無錫市で新工場を建設中で、年末の竣工、2019年の設備設置を予定している。生産能力は月間12萬枚 。この大手2社による生産能力拡大の進展が世界のDRAM需給にどのような変化をもたらすかに、市場は注目している。?  東芝傘下の半導體事業子會社 、東芝メモリ(TMC)も2020年度までの5年間に2カ所で3次元(3D)NANDの新工場を増設する計畫だ。現在、四日市にあるFab6と日本の 巖手県北上市にそれぞれ新工場を増設する。今後5年間で4つのNAND工場を保有することになる。提攜先の米ウエスタンデジタル(WD)に投資分擔を求めており、投資総額は3兆円を超える見通しだ。この投資により、トップのサムスン電子を追撃する。 一方、中國大陸の紫光集団傘下の長江メモリーテクノロジーズ(YMTC)は32層の3DNANDの生産に成功しており、承認に向けて製品サンプルを顧客に提出した。來年に生産能力を本格的に投入できる見通しで、市場に大きなインパクトを與えることが予測される。   ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

    仮想通貨のマイニング熱、半導體企業に大きな商機

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域のアナリストや記者の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は臺灣の現地記者、李臥龍(リー?ウォーロン)氏がビットコインなど仮想通貨と半導體需要の高まりについてレポートします。 世界中で仮想通貨のマイニング(採掘)熱が高まり、臺灣の半導體メーカーに新たな活力を與えている。 消息筋の情報によると、臺灣の鴻海(ホンハイ)精密工業グループが世界初となる仮想通貨の商業銀行の設立を計畫している。ビットコインの中國マイニング最大手、ビットメインも別の仮想通貨イーサリアム向けの新たなマイニングマシンの発売を予定している。 こうしたマイニング熱は、特定用途向けの半導體集積回路(ASIC)の受託生産を手掛ける臺灣積體電路製造(TSMC)やメモリー製造の晶豪科技、愛普科技、ASIC設計の創意電子といった企業に大きな商機をもたらしている。 仮想通貨の価格が足元でいくら激しく変動してもマイニング熱は一向に衰えず、この分野に參入する半導體企業は増える一方だ。 Electronic circuit board and global network concept. マイニングマシン市場では中國のビットメインが世界市場シェアの80~90%を握るベンチマーク的なトップ企業だ。 マイニングマシンの機能向上に向けて、同社は今年、TSMCにウエハー10萬枚を発注。使用する半導體製造プロセスを當初の回路線幅16ナノメートル(ナノは10億分の1)から12ナノメートルに微細化した。TSMCの最先端技術となる7ナノメートルにする可能性もあるという。 また、ビットメインは智原科技にマイニングマシン向けASICの設計を委託するとともに、サムスン電子のウエハー受託生産部門で生産を行う。こうした動きは仮想通貨に攜わる企業が依然として旺盛な市場開拓意欲を持っていることを示す。 ビットメインはライトコインなど仮想通貨専用ASIC半導體を有する。また3年前からTSMCと提攜している。昨年は業績が急速に伸び、中國のIC設計企業トップ5に躍進。同時に、TSMCの主要顧客5社に入り、同社の昨年の売り上げの10%を占めた。 ビットコインはマイニングの難度がますます高まる一方、大量の電力を消費する。このため、ビットメインは事業の主軸の一部をイーサリアムに置く方針を固め、今後の需要に備えて次世代マイニングマシンを発売するもようだ。 ビットメインが近く発売するイーサリアム向けマイニングマシンF3は、DRAM全體のバス幅を拡大させると同時に、メモリー搭載量を増やした。今後、マイニングマシン1臺につきマザーボード3枚を搭載。マザーボードには1枚當たりマイニング専用ASICプロセッサ6個が裝備され、このASICプロセッサに1GBのDDR3が32個含まれる。 1臺當たりのマイニングマシンF3は72GBのDRAMメモリーを搭載する計算だ。512MBのDDR3メモリーを搭載するビットコイン向けS9型マイニングマシンと比べ數百倍の規模となる。マイニング熱がビットコインからイーサリアムへと広がりを見せるなか、市場では、TSMCやサムスンにマイニング用ICの巨大な注文がもたらされる一方、現時點で品薄狀態にあるDRAM産業の品薄感が一段と強まり、価格上昇期間も長引くとの予測が出ている。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

    インドとASEAN、成長のカギは競爭より協力 HSBCレポート

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回はHSBCシンガポール最高経営責任者(CEO)、トニー?クリップス氏が経済成長への期待が高まるインドと東南アジア諸國連合(ASEAN)についてレポートします。 ASEANとインドは互いに競爭するよりも、協力する方がはるかに道理にかなっている。両者間には數々の相違點もあるが、実際には多くの共通點がある。 中國関連の記事が報道の大半を占めることが多いが、アジアにおける成長戦略を追求している國際的な投資家や企業ならば、インドと東南アジアという急成長中のアジア経済の二大勢力にさらなる注意を向けるべきだろう。 インドは世界人口の18%を占めており、2016年の経済成長率は7.6%に達した。世界のGDPに占めるインドの比率は3%にすぎないが、同國の規模を踏まえれば、2018年には世界のGDPの成長に対する寄與度はユーロ圏を上回るとみられる。 一方、ASEAN加盟10ヵ國(タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)のGDPを合計すると26億米ドルとなり、2016年の成長率は4.6%に達した。人口は約6億3000萬人を超え、中國、インドのいずれの人口に対してもその半分を下回るが、米國や歐州連合(EU)の人口をはるかに上回っている。 互いの消費市場から恩恵 さらに注目されるのは、両方の経済圏で消費者の購買力が成長しつつある點である。2025年までにインドでは中間層の人口が現在の2倍となる約5億5000萬人に達し、その増加數は世界のどの國よりも多くなるとみられている。ASEANでは、中間層の世帯數は2025年までに、2010年の倍近くの最大1億2000萬世帯になると見込まれている。 この中間所得層の成長は貿易を大きく促進させる形で消費構造を変化させつつあり、これは消費者をターゲットにする國際的な複合企業、そして投資家にとっては大きな意味を持つ。これら企業の多くはすでに國際的な製品を現地の嗜好に適合させており、その例としてはエルメスが販売している薄地のサリー、インドの複數の言語に対応したサムスンとアップルのスマートフォン、現地の好みに合わせてメニューを変えているバーガーキングなどが挙げられる。 興味深いことに、ASEANとインドは直接的および間接的に、つまり、直接的にはコモディティの貿易で、間接的にはITサービスおよびエレクトロニクスで、お互いの消費市場から恩恵を受けることになるとみられる。 コモディティへの依存度を低下させるのに成功してきてはいるものの、ASEANは依然としてコモディティの輸出に大きく依存しており、特にパーム油はマレーシアとインドネシアの輸出全體の約10~12%を占めている。このコモディティの主要な輸出先の1つがインドであり、インドで消費される植物油全體の3分の1をインドネシアが供給している。 アップルやサムスンが持つような広範なサプライチェーンはASEANにとって非常に重要であり、この地域の輸出全體の30%を占めている。これには、シンガポールでの半導體の受託生産から、マレーシアでの半導體の検査、フィリピン、タイ、ベトナムでの組立てなどが含まれる。 最終製品を輸出するのは中國や韓國かもしれないが、最終消費者は実際にはインドにいる可能性もある。インドで現在スマートフォンを所有しているのは3億人にとどまり、この所有者數は今後數年以內に50%増加する見通しであることを考慮すると、驚くべきではないのかもしれない。中國のメーカーは現在インドの市場で半分のシェアを持っている。 貿易と投資の関係改善が加速 2つの経済圏は発展段階が同程度であるため、貿易と投資で競爭関係にあると思うかもしれないが、実際にはインドとASEANは相互に協力する方が理にかなっている。 11月にマニラで開催されたASEANビジネス?フォーラムで、インドのモディ首相は、インドの「アクト?イースト政策」での取組みの中心になるのがASEANとの関係改善であると述べ、さらにASEANとの経済的および事業上の関係について、「格別に良好な政治的および人的関係」と呼べる水準にまで高めることを約束した。 今年1月にインド?ASEAN間の正式な対話関係樹立25周年を記念したサミットがデリーで開催されたこともあって、貿易および投資での関係改善は今後數年間加速すると確信できる十分な理由がある。 実際、両者はインド?ASEAN間の貿易額を2022年までに少なくとも2000億米ドルにまで拡大するという目標を設定したが、目標時期がまだかなり先であるため実現の可能性は高いとみられる。 ASEANは現在、インドにとって4番目に大きな貿易相手地域であり、インドの貿易額全體の10%を占めている一方、インドはASEANにとって7番目に大きな貿易相手國となっている。より詳細に見ると、インド?ASEAN間の年間貿易額は2014~15年には約765億3000萬米ドルだった。しかし、2015~16年には、世界経済の停滯を背景としたコモディティ価格下落の影響で650億4000萬米ドルにまで減少した。 貿易と比較すると投資の流れは非常に好調で、インドに流入した海外直接投資(FDI)の25%はASEANからの投資であり、その大半はサービス、電気通信、建設、ITセクターに対する投資であった。 相違點から見出される投資機會 経済発展の共通點によってASEANとインドは類似性が高まったものの、2つの経済圏の地理的およびセクターの多様性によってこの経済回廊構想の可能性が現実のものになるとみられる。 すでにこのような変化が起こりつつある。インドのモレとタイのメーソットをミャンマー経由で結ぶインド?ミャンマー?タイ三國間高速道路が建設中で2019年の完成が目標とされている。ミャンマーとタイは共同で喫水の深い船舶も入港可能なダウェィ港を建設中で、インドはこの港とチェンナイを結ぶ航路を計畫している。シンガポールはインド南部のアンドラ?プラデシュ州と、同州の新州都の開発とフィンテック協力協定に基づくプロジェクトで協働している。 2017年初めのマレーシアのナジブ?ラザク首相によるチェンナイとニューデリーの訪問が、メディカル?ツーリズム(醫療観光)および教育を含めたサービス業に重點を置いた320億米ドルの協定の締結につながった。アダニ?グループを含む複數のインド企業が、予想投資額が90億米ドルのマレーシア、キャリー島の新港灣都市開発計畫に協力するとみられる。 フィリピンでは、インドのIT企業、ウィプロ、TCS、インフォシスなどがBPO(ビジネス?プロセス?アウトソーシング)事業をマニラで展開している。 カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムはインドの繊維産業と連攜している。2016年末に、インド政府はインド企業がこれら4カ國で生産およびサプライチェーンの構築支援をするため、総額7700萬米ドルのプロジェクト開発基金の設立を承認した。さらに、インドネシアはインドで消費される食物油全體の3分の1を輸出しており、両國はそれぞれの海上インフラの改善を目指すという共通の意向を持っていることを表明した。 世界経済の成長の原動力に インド、ASEANがともに経済的成功を続けられるかどうかも、両國の貿易およびビジネス運営上の障壁を削減する意欲にかかるとみられる。 ASEANとインドが當面重視するのは、東アジア地域包括的経済連攜(RCEP)の締結とみられる。RCEPはASEANが主導し、それぞれの人口を合計すると世界人口全體の50%に達するインド、中國の2カ國を含む自由貿易協定締結國6カ國も參加した多國間貿易協定である。 インドはRCEPを後押しするために、ASEAN(およびその他の締結國)がサービス市場を一段と開放して、労働力の移動の自由度を高めることを條件に、自國の関稅を最大80%削減することを最近約束した。 これが実現した場合には、インドの輸出全體の48%を占めながら急成長を続けているITサービス?セクターの大きな成長ポテンシャルが開花するはずだ。この協定が締結されれば、今後參加國全體の輸出を4%拡大させる可能性がある。 RCEP協定交渉參加國は、今年11月にシンガポールで開催されるASEANサミットでの協定締結に期待している。 貿易および投資の道筋をつけるための貿易協定の改善は今後も最重要の戦略であり続けるとみられるが、一方でASEANとインドの間の通商上および投資に関する連攜は、より革新的かつ現実的な方法で拡大させる必要がある。 上述のように、既存の足がかりの上に新たな成長のための環境を構築することが出発點であることは明白である。同様に、インド?ASEAN間の正式な対話樹立25周年を記念した最近のデリー?サミットのような首脳會談の機會も活用するべきだ。 インドとASEANは、現時點では米國、EU、中國の経済ほどの重要性は持っていないかもしれないが、世界経済における成長の原動力としての役割が急速に高まっている。両國間の関係強化によって、両國の國際的な重要性はともにさらに高まるとみられる。 このような背景から、國際展開する複合企業および、それらの各地域のサプライチェーンが新たな成長機會を求める場合には、これら2つの市場に注目するだけで十分とみられる。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

    テンセント決算予想 ゲーム好調で5割増収か 課題はコンテンツコスト抑制

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域のアナリストや記者の現地の聲をニュース形式で配信している。今回はフィリップ証券(香港)のルイス?ウォン(Louis Wong)氏が香港上場の中國インターネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)についてレポートした。 テンセントが21日に2017年12月期決算を発表する。アナリスト予想では売上高は前の期比57.9%増の2398億人民元、純利益は64.6%増の676億4000萬元。1株當たり利益(EPS)は57.5%増の6.9元が見込まれている。 17年1~9月期のテンセントの売上高は、前年同期比59%増の1713億元だった。スマートフォン向けゲームやPCゲームのほか、決済関連サービスやデジタルコンテンツ販売、オンライン広告もけん引した。純利益は44%増の507億元だった。テンセントの17年12月期の市場予想をもとに試算すると、第4四半期(17年10~12月期)は売上高が5.1%増の685億元、純利益が5.9%減の169億4000萬元だったことになる。 この1年のテンセントの株価の推移 事業別でみると、付加価値サービス(オンラインゲームやPCクライアントゲーム、ソーシャルネットワーク関連)が引き続きテンセントの主な収益源となっている。1~9月期の付加価値サービスの売上高は前年同期比45%増の1140億元で、売上高全體の66.5%を占めた。粗利益は33.3%増の689億元で、全體の80.7%に達していた。 オンライン広告業務の売上高は50.3%増の280億元(全體の16.3%)、粗利益は32.9%増の102億5000萬元(全體の12%)。決済関連業務やクラウドサービスの売上高は171.5%増の292億5000萬元と大幅に伸び、粗利益も337%増の62億64000萬元に拡大した。 テンセントの交流サイト(SNS)「QQ」の月間アクティブユーザー數(MAU)は17年9月末時點で前年同期比3.8%減の8億4300萬人で、ブログサービス「QQ空間」のMAUは10%減の5億6800萬人だった。 一方、チャットアプリ「微信(ウィーチャット)」のMAUは9億8000萬人と15.8%増えた。1日當たりのメッセージ送信數は25%増の約380億件に達した。月間のアクティブ公式アカウント數は14%増の350萬件、公式アカウントの月間アクティブフォロワー數は19%増の7億9700萬人だ。QQユーザーの伸びが頭打ちになる一方、ウィーチャットのユーザーが引き続き増えているということが、これらのデータからうかがえる。 注意すべき點は、テンセントが売上原価について一定程度のプレッシャーを抱えているということだ。ゲームを中心とする付加価値サービス事業の7~9月期の売上原価は前年同期比73%増え169億元に上った。レベニューシェアやコンテンツコストが比較的多いことに加え、第三者との提攜によってアプリケーションストアのスマートフォン向けゲームチャネルのコストが増えたことが主な要因だ。 今後いかにしてコスト増を抑えるかが、テンセントの課題となる。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。 本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判斷と責任で行って下さい。株式會社QUICKおよび情報提供元であるルイス?ウォン氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付隨的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

    世界レベルに成長する中國の「大灣岸圏」 HSBCレポート

    QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBCグレーター?チャイナ統括 チーフ?エグゼクティブのヘレン?ウォン氏が中國の大灣岸圏についてレポートします。 中國は「広東?香港?マカオ大灣岸圏」として知られる同國南部に、世界的な競爭力を備えた國際的水準の都市圏を構築するという地域統合計畫を推し進めている。技術革新、金融、貿易に軸足を置くこうした地域は、グローバリゼーションの新たなリーダーとして浮上しつつある。 1970年代後半以來、長期にわたって広東省は中國の改革開放政策で先頭に立ってきた。広東省は再び、この経済の転換をリードしつつあるが、今回は世界の工場としての地位からサービスと技術革新のための非常にダイナミックな拠點(ハブ)への転換が目標とされている。広東省のサクセスストーリーで重要な役割を果たした要因の1つが、香港に近いという地理的條件であり、両地域は主に市場主導で共に成長してきた。 広東省、香港、マカオの経済の統合をさらに発展、深化させ、中國の経済発展と改革開放政策におけるこの地域の役割を拡大させるために、中國は「大灣岸圏」として知られる都市群の開発計畫を策定した。 この畫期的な構想は、自然の地理的條件に基づいて、広東省の珠江デルタ地域の9都市(広州、深セン、珠海、仏山、中山、東莞、恵州、江門、肇慶)に加えて、香港、マカオの2つの特別行政區を結びつけ、世界的な競爭力を備えた経済圏を構築することを目的とするものである。 過去數十年間にわたって、大灣岸圏の都市はそれぞれ獨自の優位性および経済構造を生み出してきた。この計畫の狙いは、香港、マカオ、広東省で、確立された製造業のサプライチェーン、技術革新力、金融サービス、物流、洗練された消費市場などの分野の相補的な強みを結び付けることである。この計畫の最終目標は経済の新たな成長拠點を生み出すことである。この成長拠點が、中國の経済発展を先導し続けるだけでなく、東京、サンフランシスコやニューヨークなどの世界の主要な灣岸地域に匹敵する規模に成長することが目標とされている。 この構想は非現実的なものではない。大灣岸圏の11都市は、人口、経済規模、その資源の観點から見て、1つの獨立國家同様の繁栄を実現することが可能である。 大灣岸圏の人口を合計すると6795萬人となり、世界最大の都市群である東京首都圏の人口4400萬人を上回る 。その面積は約5萬6000平方キロメートルとニューヨーク都市圏の面積に匹敵する。 中國で最も急速に成長している地域の1つである広東?香港?マカオ大灣岸圏の2016年のGDPは合計で1.4兆米ドルであった。2030年までにこの地域のGDPは4.6兆米ドルに達すると予想されており、その場合、東京、ニューヨーク、サンフランシスコの灣岸地域を上回り、経済規模が世界最大の灣岸圏になることになる。 大灣岸圏は経済規模が巨大であるだけでなく、國內のみならず國際的にみても明確な競爭力を備えた多様な産業を多數抱えている。 世界的にみて成功している灣岸地域を調べてみると、いくつかの共通點が見いだされる。全ての地域に、活発な國際金融センター、発達したサービス産業、強固な物流網、複數の一流大學に加えて技術革新の拠點がある。この好例として、技術革新とハイテク分野で高く評価されているサンフランシスコ灣岸地域や、金融サービスで強みを持つニューヨーク都市圏を挙げることができる。 シリコンバレーがサンフランシスコ灣岸地域の中心部にあるのと同様に、深センには製造業の大きな集積があり、中國における技術革新の中心地となっている。中國で最も高く評価され、最も獨創性のある企業のうち、ファーウェイ(華為技術)とテンセント(騰訊控股)という2社の本拠が深センにある。アップルなどの海外のテクノロジー分野の巨人も深センに研究開発拠點を建設している。 香港は、深センの革新的な環境に対して、完全に補完的な役割を果たしている。香港は引き続き金融センターとしての役割を果たし、中國企業がグローバルな展開を始める場合の出発點として機能することになるとみられる。深センには中國本土における2つの証券取引所のうちの1つである深セン証券取引所があることもあり、香港と深センは活発な金融センター、そして証券取引所を持つニューヨークに類似している。例えば、中國のインターネット関連サービス分野の巨人であるテンセントは深センを本拠としているが、香港証券取引所に上場している。 一方、広州は先進的な製造業および最新のサービス業の拠點として発展しつつある。さらにマカオは、隣接する珠海市橫琴とともに、國際的なレジャー産業の中心地となることを目指している。 これら中核都市に加えて他の珠江デルタ地域の都市の膨大な資源、面積、比較的安価な労働力という強みにより、大灣岸圏は國際的な協力および競爭での優位性を大幅に高めて、技術革新、金融、物流、貿易面で世界的にみて重要な都市群として浮上することになるとみられる。 大灣岸圏の発展に伴い、その影響は地理的境界をはるかに越えて広がり、中國の「一帯一路」構想の進展にとって追い風となるとみられる。大灣岸圏は「シルクロード経済ベルト」(中央アジアから歐州へ)および「海上シルクロード」(東南アジア、大洋州からアフリカおよび中東へ)に沿った國々を結ぶ上で重要な役割を果たすことになるとみられる。 灣岸地區の発展には包括的な輸送ネットワークの構築が不可欠である。橋とトンネルから構成される東京灣アクアラインやサンフランシスコ?オークランド?ベイブリッジ、ゴールデン?ゲート?ブリッジは灣岸地域のインフラを象徴するほんの數例である。 大灣岸圏では近年輸送インフラが大幅に拡充され、地域統合の基盤となっている。広州、深セン、香港を結ぶ広深港高速鉄道は2018年第3四半期に開通する予定である。これにより香港から深センの國境までの列車移動の所要時間はわずか14分に短縮されることになる。香港、珠海、マカオを結ぶ港珠澳大橋によって、香港と珠海またはマカオ間の車移動の所要時間は4.5時間から約40分に短縮される。この橋によって、香港、マカオおよび珠海デルタ西部地區の経済発展が促進されるとみられる。 中國経済は、労働集約型で製造業が基盤となった経済から、中流階級の成長に支えられたサービス業?技術革新指向型の経済に移行しつつあるため、大灣岸圏は中國の新しい成長モデルへの転換を先導することになるとみられる。製造業、技術革新、物流関連の多くの分野で圧倒的な強みを持っていることとは別に、大灣岸圏は金融テクノロジー、再生可能エネルギー、バイオ醫薬、ヘルスケア、醫療機器、観光、ウェルス?マネジメントの分野でも成長する可能性がある。 適切な金融、物流、製造業および技術インフラが整備されていることは、大灣岸圏構想が成功するための條件の一部にすぎない。人、物、資本の地域內の自由な移動を確保するためには、関連する地域間の政策および規制を整備する必要がある。 大灣岸圏の発展は始まったばかりである。世界はこの胸を躍らせるような変化に細心の注意を払うべきである。なぜなら、この都市群は世界的な生産、技術革新の重要な拠點にとどまらず、世界の商業および経済成長の中心となる可能性があるからだ。

    アリババ、5億人のデータを?リアル」活用 商取引の転換目指す【アジア特Q便】

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域のアナリストや記者の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス?ウォン(Louis Wong)氏が中國インターネット通販最大手、アリババ集団の動きをレポートします。   2016年開催のアリババ集団のフォーラム「雲棲大會」で、馬雲會長は初めて「ニューリテール(新小売り)」というコンセプトを打ち出した。その戦略の一つが、オフライン企業への投資や買収を通じてオンラインとオフラインの業務を結合するというものだ。百貨店業態がアリババによる従來のリテール改造の最初の試験場となる。アリババは14年3月に香港株式市場に上場していた中國百貨店大手の 銀泰商業に53億7000萬香港ドルを出資し、同社の2番目の大株主となった。さらに17年5月には同社の株式を非公開化した。 「生活選集(ハウスセレクション)」はアリババと銀泰商業が提攜する新たな小売りプロジェクトだ。生活選集は16年12月、銀泰商業の浙江省杭州市の武林店內に1號店を開設した。面積約1200平方メートルの店內に並ぶ商品はいずれも、アリババ傘下の通販サイト「天貓(Tモール)」の良質な「淘(タオ)ブランド」。ホームテキスタイルや食器?調理具、家具、児童用品、ペット関連のほか、撮影といったクロスオーバーなサービスを含めた6つの商品群をそろえている。 ハイパーマーケットとショッピングモール內スーパーは、アリババによる従來のリテール改造の2つ目の試験場となる。アリババは17年11月、約224億香港ドルを投じて高キン零售(サンアート?リテール)の株式36.16%を直接的、間接的に取得すると発表した。サンアートは中國最大規模のハイパーマーケット運営企業で、「歐尚(オーシャン)」「大潤発(RTマート)」という2大ブランドで全國29省?市?自治區にハイパーマーケット446店を展開している。16年度の売上高は1000億人民元を超え、長年に渡り中國小売業界でトップシェアを維持している。 その後、アリババはサンアートに対して同社発行済み株式すべてをまとめて買収すると提案した。しかし、結果はサンアートの発行済み株式の約0.0032%の30萬3600株を取得したにとどまった。このため、サンアートは引き続き香港株式市場で上場を維持している。 サンアートの非公開化に失敗したものの、アリババはわずか1カ月でアリババ経済圏の5億人を超える消費者や數百萬社に上る販売業者、クラウドプラットフォーム、ビッグデータのリソースが、大潤発のサプライチェーンの店舗ネットワークにダイナミックに融合しつつあることを明らかにした。ネットスーパー「天貓スーパー」 の100萬點を超える精選された商品が大潤発の20都市にある店舗167軒に導入されたと発表した。 調査研究機関のリポートによると、日用消費財(FMCG)分野の約1割の消費者がサンアート(歐尚+大潤発)の消費者であると同時に、淘寶(タオバオ)系列(天貓+淘寶)の消費者でもある。このため、両社の提攜は相乗効果を生み、新たな市場の獲得が可能だという。両社は今後さらに、かつてない消費體験を消費者に提供するべく、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった新たな技術を提供していくとみられている。 一方、アリババ集団は引き続き、ニューリテールの事業組織の変更を進めていく。同社はこのほどクラウドリテール事業部と天貓、淘寶とを全面的に合併させると発表した。天貓のニューリテールプラットフォーム事業部がアリババ集団のクラウドのインフラ設備やデジタル化能力、ビッグデータのリソースを統合することになる。 アリババはクラウドリテール事業部のニューリテール業務とデジタル業務の全面的な融合で、オンライン?オフライン一貫のより完備されたサポートを世界のブランドに提供し、商取引(コマース)全體の大転換をけん引すると表明した。同時に世界のブランドとともに、最先端のニューリテール業態を通じ、より高い消費者ニーズを満たしていくとも述べている。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。 本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判斷と責任で行って下さい。株式會社QUICKおよび情報提供元であるルイス?ウォン氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付隨的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

    AI半導體最前線 エヌビディアにライバル続々

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域のアナリストや記者の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は臺灣の現地記者、李臥龍(リー?ウォーロン)氏がAI半導體の最前線をレポートします。 時代はGPUからASICへ 人工知能(AI)が急速に隆盛し、グラフィック処理ユニット(GPU)が主な演算チップに採用されたことで、畫像処理半導體の2大メーカーであるエヌビディアとアドバンスト?マイクロ?デバイス(AMD)の株価が急騰した。もっとも、アプリケーションが一段と多様化するなか、特定用途向け半導體集積回路(ASIC)に切り換えるシステムメーカーも少なくない。畫像処理半導體は今年にもASICにその地位を奪われることになると予測するアナリストは多い。 AIは過去數年間の半導體におけるメインストリームだと言えるだろう。エヌビディアやAMDの株価が數倍に高騰したことからも、高速演算チップを用いた膨大なデータや畫像を処理は今後の流れであることが充分に分かる。 多くのシステムメーカーが音聲?畫像認識や自動運転、醫療などに深層學習(ディープラーニング)を備えたAI半導體を導入している。エヌビディアは最も早い時期からこうしたメーカーと提攜しており、當然のことながらAI市場の隆盛の最大受益者となった。 しかし、畫像処理半導體の高速演算アルゴリズムは、すでにシステムのニーズを満たすことができなくなっている。 TSMC、ビットコイン関連で大型受注 最新の調査によると、最近の市場で注目を集めているビットコインなど仮想通貨ではマイニング(採掘)の難易度が絶えず高まり、GPUに替わりASICが用いられるようになった。 最新情報によれば、ビットコインのブームを巻き起こした中國のマイニング最大手ビットメインは今年、半導體受託生産會社(ファウンドリー)世界最大手の臺灣積體電路製造(TSMC)にウエハー10萬枚を一気に発注した。TSMCの回路線幅12ナノメートル(ナノは10億分の1)製造プロセスを用いてASIC半導體を生産し、次世代マイニング機器のコアチップにするという。関連の発注に関しては今年から出荷を開始し、毎月1萬個を納める見通しだ。 この大型受注により、TSMCの株価に対する悪材料は打ち消された。スマートフォンの受注が予想を下回り、売上高が當初の想定から1割近く落ち込むとされていたが、減収幅は5%未満に縮まるとみられている。外國人投資家のTSMCに対する評価も変化した。外國人投資家は今年1月2日以降、累計でTSMC株を5萬株買い越しており、TSMCの株価を226臺灣ドルから7%高の242臺灣ドルにまで押し上げた。 期待されるザイリンクスのFPGA 専門の海外投資機関も今後ASICがGPUに取って代わりAIの新たなスターになると有望視している。なかでも特に將來性を期待されているのが、製造後に回路構成の設定が可能な半導體FPGAの最大手である米ザイリンクスだ。FPGAの消費電力がGPUを下回る一方、処理速度が比較的速いというのがその主な要因。FPGAチップを用いてゲノム配列解析や音聲認識の精度向上に必要なディープラーニングを行っているメーカーもすでにあるという。 AI発展の分け前にあずかろうとASIC開発を目指す半導體企業もますます増えている。米グーグルのAIチップの研究開発に協力したブロードコム、キャビウム、マーベル、マイクロセミ、臺灣の聯発科技(メディアテック)と中國インターネット通販最大手アリババの連合などが例として挙げられる。AIアプリケーション向け半導體の商機をめぐって爭う競合が増えることで、エヌビディアとAMDの好況も間違いなく分散されることになるだろう。 ※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。 ※本情報は、情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的としたものではありません。有価証券その他の取引等に関する最終決定は、お客様ご自身のご判斷と責任で行って下さい。株式會社QUICKおよび情報提供元である李臥龍氏は、本情報を利用して行った投資等により、お客様が被った、または、被る可能性のある直接的、間接的、付隨的または特別な損害またはその他の損害について、一切責任を負いません。

    キャッシュレス化を目指すインド HSBCレポート

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBCグローバル?アセット?マネジメントのインベストメント?ダイレクター、ニラン?メータ氏がレポートします。 インドの電子決済革命を牽引しているのは意外に思えるかもしれないが、政府である。 インド政府は、インド準備銀行(中央銀行)の助言の下、民間の専門家の協力を得て、ここ數年で國內の電子決済を飛躍的に前進させた。通常、新興國の政府は官僚主義的で、大きな技術革新を主導するようなことはほとんどなく、極めて珍しい成功例と言える。 インド決済公社(NPCI)は、インド國內のすべての小売業の決済システムを統括する組織として約10年前に設立された。その主要な目的は、複數のシステムを1つの標準的なプラットフォームに集約、統合することである。 決済手段の革新 インドは2022年までに攜帯電話、スマートフォン、インターネットの利用者數が世界第2位になると予測されており、現在は電子商取引と電子決済の普及拡大を加速させるのに最適な時期とみられる。しかし現在のインドの現金決済比率は約80%と、先進國の約20-25%や中國の50%を大きく上回っているため(※1)、「キャッシュレス」経済とは程遠いのが現狀である。そのほかにも、スマートフォンの普及率が低く、インターネットのサービスエリアが限定的で、電子決済の手數料が相対的に高いことなどが障害となっている。 しかしNPCIはこれらの課題に対処するため革新的な解決策を開発した。具體的には、スマートフォンやインターネットの普及率が比較的低いという問題を解決するために、インターネットに接続できない基本機能のみのベーシックな攜帯電話を使って電子決済が可能なシステムを開発した。NPCIはまた、統合決済インターフェース(UPI)という、ピアツーピア、個人と商店、または企業間の決済をベーシックな攜帯電話で行える統合型のオープンアーキテクチャシステムを開発した。世界の決済システムの展望において現時點で最も革新的な動きと言えよう。 だが、インドの巨大人口をカバーできるまでに利用網を拡大するのは依然として困難を伴う。しかし、アドハー(國民総背番號制)対応決済システム(AEPS)が、インドの電子決済革命の起爆剤になると考えられる。AEPSによりスマートフォンを持っていない利用者、そしてPOS(販売時點情報管理)システムを備えていない小売店という二つの問題が解決する。小売店側が普通のスマートフォンを持っていれば、10米ドルで買えるデジタル読取り裝置をこれに接続することによって指紋および虹彩をスキャンできるようになり、買い手は銀行口座の本人確認にも利用できる生體認証IDを使って決済が可能となる。この「アドハー決済」は、インド特有の課題の解決のためにインドが獨自に編み出した解決法となっている。 高額紙幣廃止がきっかけとなったキャッシュレス革命 インドは伝統的に現金中心の経済であったが、大きな変化がゆっくりと進行している。決済全體に占める現金決済の比率は2005年には92%だったが、2015年までに78%に低下した(※1)。つまり毎年1%ポイントずつ低下してきたことになる。昨年インド政府がGDPの12%、流通紙幣の86%(金額ベース)に相當する高額紙幣を廃止したことが電子決済を後押しする形になった(※2)。この決定によって人口の大半は、新紙幣が銀行やATMに屆くまでの間、電子決済を利用することを余儀なくされた。 この期間に政府は、UPIシステムの根幹を強化し、自ら開発したスマートフォン用電子決済アプリ、バーラット現金決済インターフェース(BHIM)のサービスを開始した。BHIMシステムによって、銀行口座と攜帯電話を持っていれば誰でもワンクリックで即時送金することが可能となった。2017年10月現在でBHIMアプリのダウンロード數は2,000萬件(※3)に達し、政府は2018年3月までにこれを4億件にするという野心的な目標を設定した。 新たな參入企業と後続企業 インドの電子決済市場にはこれに注目した世界的な企業も參入している。中國のアリババはモバイル?ウォレット大手のPaytm(ペイティーエム)と提攜し、より最近では、フェイスブックやグーグルがUPIを利用して、統合決済サービスをWhatsApp Messenger(ワッツアップメッセンジャー)や様々なグーグルのアプリに統合しようとしている。 WhatsAppはUPIに接続した決済システムの試用を2017年8月から実施しており、近日中に本格的に展開する予定だ。WhatsAppのインド國內のユーザー數は2017年半ばで2億5,000萬人、またインドで販売されるスマートフォン10臺中9臺がアンドロイド端末であるため、これら企業の參入は電子決済革命に向けて注目すべき潮流と言える。 インドは決済の電子化を急速に進展させているため、電子決済に対する抵抗感は薄れ、デジタル化分野の透明性は向上し、今後も拡大し続けるとみられている。インド経済における現金に関わるコストの総額はGDPの1.7%(※4)程度と推定される。電子決済の拡大により、長期的にはこのコストは減少が見込まれる。企業と個人にもデジタル化分野の拡大による恩恵が広がるだろう。金融サービス企業が消費者行動?需要に関するデータを利用して顧客の理解を深め、利用者が適切なコストで金融サービスにアクセスできるように狀況を改善するはずだ。 インドでは、デジタル決済革命が起こりつつある。同國の人口規模、経済成長ポテンシャル、また政府の電子決済普及に向けた積極的取り組みから見て、これは注目すべき潮流と言える。 出所: ※1. ボストン コンサルティング グループ(BCG)およびグーグルの報告におけるデータ – 電子決済2020(Digital Payments 2020) – 2016年7月現在 ※2. インド準備銀行(RBI)による2016年11月現在のデータ ※3. NPCIによる2017年12月現在のデータ ※4. Visaによる2016年10月現在のデータ

    中國での環境意識の高まり:自転車利用、カーシェア、植樹 HSBCレポート

     QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC中國のデビッド?リャオ(David Liao)社長兼CEOがレポートします。   11月6~17日、ドイツのボンで第23回國連気候変動枠組み條約締結國會議(COP23)が開催された。COP23では、世界中の政府関係者が一同に會し、気候変動に関する世界的取組の今後について協議する。そこへ世界各國の政府にとっては意外な協力者が出現した。中國の13億8,000萬人の消費者である。 中國の過去數十年にわたる飛躍的な経済成長は、人口の大半を貧困から脫卻させたが、環境を犠牲にしてきたことは疑いようもなく、世界第2位の経済大國である中國の溫室効果ガス排出量は世界最大である。中國の重工業が関連する大気汚染のニュースや、スモッグで包まれる國內の大都市のイメージが度々報じられている。 このため中國の消費者が環境を意識しているとの見方には説得力がないかもしれない。 しかし、中國の環境汚染がきわめて広範に拡大する兆候が浮上し、國民は気候変動に敏感になり新たな対策が必要と考えるようになった。 例えば市場調査會社のイプソスが8月から9月にかけて世界各國で実施した調査(※1)によれば、國內の気候変動を懸念する回答者が最も多かったのは中國で、回答者の24%が懸念事項上位3つのうちの一つに気候変動を挙げている。中國に次いでカナダが21%だったが、調査対象の26ヵ國の平均はわずか10%だった。 ※1 Ipsos, What Worries The World Survey, September 2017 https://www.ipsos.com/ja-jp/what-worries-world-autumn-2017J 同時に、中國で急速に拡大する中間所得層の間では、健康と生活の質に関する要求が一段と高まっている。こうした人々の多くはテクノロジーに詳しく冒険心が旺盛で、自分たちの嗜好や要望に応えようと革新的な民間企業が提供する新しいプロダクトやサービスを積極的に試そうとしている。 顕著な事例として、昨年1年あまりの間に急速に普及した自転車シェアリングが挙げられる。中國では一時は街路からほとんど姿を消した自転車が、現在は再び息を吹き返している。今や中國の多くの都市の街角や地下鉄の出口で、市民がモバイル機器をスキャンしてレンタル自転車の鍵を開け、毎日の通勤の最後の交通手段あるいはスーパーマーケットまでの足として利用する光景が見られる。 いたるところに自転車が駐輪されることを懸念する見方も一部にはあるが、こういった便利で低コストの取組をきっかけに、より健康的で経済的負擔が少なく環境保全にもプラスとなるこの交通手段を、數百萬人の中國人が再び愛好するようになっている。 自転車シェアリングサービスの新興企業として、中國のテンセントや米國シリコンバレーのベンチャーキャピタル、セコイア?キャピタルからの投資を得ているモバイクによれば、同社の1億人に上る顧客の自転車の利用はこの1年以內で倍増し、自動車での移動を半分に減らしたとされる。 さらにモバイク社は、10萬人の顧客を対象に行った調査を基に、同社のサービス利用者は2016年半ばに計畫がスタートしてからの1年間で、二酸化炭素排出量を54萬トン減らしたと推計している。これは自動車を1年間に17萬臺減らしたことに相當する。 自動車を選好する人々にとっても、中國はカーシェアリングの試験臺となりつつある。ドイツのミュンヘンを本拠地とする経営戦略コンサルティング會社ローランド?ベルガ―は、中國國內でカーシェアリングに利用される自動車の數は、大気汚染を抑止したい政府の取組を背景に、2025年まで毎年45%のペースで増加すると予想している。(※2) ※2 Roland Berger, Car Sharing in China (6 April 2017) https://www.rolandberger.com/en/press/Car-sharing-in-China-Size-of-fleet-to-grow-45-percent-per-year-through-2025-%E2%80%93-h.html 環境に特に配慮している事例として、上海拠點のEVカードは23都市で8,000臺を超える電気自動車を短期レンタルしている。利用者はモバイル端末のアプリとキーカードを使って、1分間當たりわずか0.50人民元ないし1日當たり180人民元でレンタルできる電気自動車を探すことが可能だ。180人民元は30米ドルに満たない金額である。 政府の振興策もあって中國の電気自動車市場も活況を呈している。昨年1年間に中國では25萬7,000臺の電気自動車が登録された。これは世界全體の電気自動車登録臺數の55%に相當し、米國での登録臺數の3倍である。 また中國當局が化石燃料自動車を將來禁止することも視野に入れていることから、電気自動車の市場は急速な拡大を続けるだろう。中國當局がこうした取組みを検討していると9月に報道された一方で、今年に入ってからフランスや英國でも同じ趣旨の発表が行われた。 より一般的な市民生活レベルでも、環境保全の考え方は中國人の日常に浸透しつつある。2016年8月にはユビキタス?モバイル決済アプリのアリペイに「アント?フォレスト」というミニアプリが導入された。このアプリの利用者はウォーキングやネットショッピング、請求書のオンライン決済などを通じて「グリーンエネルギー」ポイントを獲得する。アント?フォレストに十分なポイントを貯めた利用者は、それを実際の苗木と交換し內モンゴル自治區の砂漠に植樹することができる。 國連の環境プログラムと協調してこの取組みを主導しているアント?ファイナンシャルの報告によれば、このアプリが導入されてからの6カ月間に2億人のユーザーが參加し、この間のユーザーの行動変化によって推計15萬トンの炭素排出量が削減され100萬本を超える苗木が植樹された。 世界全體に突き付けられている環境問題に比して、こうした動きの全てはほんのわずかな前進にすぎないかもしれない。しかし中國の人口と経済規模の大きさを考えれば、こうした進歩は中國國內だけでなく世界全體にとって重要である。 またこれは中國で急速に増加する中間所得層の要求に応えたい企業にとっての教訓でもある。英國のベビー服販売業者であれ、日本の自動車メーカーであれ、あるいはアメリカのレストラン事業者であっても、中國の消費者が製品やサービスの価格や利便性だけでなく環境への影響を一段と意識し始めたことには注意を向ける必要がある。 消費者とともに中國の政府當局も、気候変動に関するパリ協定を順守するとした上で、エネルギー消費抑制や排出ガス削減、再生可能エネルギー創出の取り組みを強く推進している。これらによって地球環境は改善されていくだろう。    

    中國の「シリコンバレー」が主導するデジタル革命 HSBCレポート

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC広東省チーフ?エグゼクティブのモンゴメリー?ホー氏がレポートします。   中國、テクノロジー利用拡大 シリコンデルタが目覚ましい成長 世界のテクノロジー産業における次の大変革はおそらく、中國國內で最も革新的な企業の多くが本拠地を置く広東省の都市集積地帯のシリコンデルタから生まれるだろう。起業家精神や創造性、市場構造、通信インフラ、壯大な規模などを併せ持つ中國本土のテクノロジーセクターが、中國全體のけん引役となる日がやって來るのは時間の問題である。 その萌芽は特に珠江デルタで容易に見出すことができる。世界最大級のハイテク企業の本拠地である深センをはじめとする珠江デルタ地域全體は、今や世界をリードする先進的デジタル製造業のエコシステムへと進化している。 中國でテクノロジーの利用が急速に拡大したことが、シリコンデルタの目覚しい成長のきっかけとなっている。HSBCの「トラスト?イン?テクノロジー(Trust in Technology、英文レポート:http://www.hsbc.com/trust-in-technology-report)」調査によれば、中國本土の回答者の100%がスマートフォンを所有し、そのうち82%がソーシャルメディア上の金融サービス?プログラムを利用し、43%が無線接続と音聲操作の機能を備えたスマートスピーカーを所有している。これらを踏まえると、今年4月に深センに本社を置くインターネット企業騰訊控股(テンセント)が時価総額で世界第10位となり、11位に電子商取引大手のアリババが続いたことは驚くにはあたらない。 百度、アリババ、テンセントは単一プラットフォームでアプリ構築 西歐では、スマートフォン利用者がそれぞれ異なるニーズでワッツアップやアマゾン、フェイスブック、ウーバー、エアービーアンドビーなど異なるアプリを使用している。これに対し中國では百度(バイドゥ)、アリババ、テンセントのいわゆる「BAT」が単一のプラットフォーム上で作動するユニバーサルアプリを構築している。アプリからアプリに移動する必要が無く、一つのアプリをインストールすればほぼ事が足りる。 6年前にテンセントが微信(ウィーチャット)のサービスを開始したときは単純なチャットアプリに過ぎなかったが、現在のウィーチャットはソーシャルメディア、決済、マッチングサービス、ニュース、メッセージをはじめとするサービスを9億人以上のアクティブユーザーに提供している。いわば、スナップチャットやワッツアップ、スカイプ、インスタグラム、ペイパル、フェイスブックライブ、イェルプ、ティンダー、アップルペイなどのアプリが一體になったものと考えることができる。これに対し、ウィーチャットに相當する西歐のサービスでは、単一のプラットフォームで提供できるものは比較的限られたユーザー體験にとどまる。 しかしウィーチャットが、競合相手のサービスの単なる模倣版を寄せ集め、利便性を提供していると考えるのは大きな間違いである。わずか10年前に地味なスタートを切った中國のインターネット企業だったテンセントは、今や世界のテクノロジーセクターのクリエイティブなアイデアを生み出す中心的存在だ。3つの基本的なアプリを使えば、ほぼ全てのものを手にすることができ、どんなことでも可能で、誰とでも會うことができる。ウィーチャットを使えば、ショッピングモールに向かう前にその場所がどれだけ混雑しているかを色分け地図によってリアルタイムで表示することまで可能だ。 中國國內で一段と増加している洗練された若い世代は、デジタル技術とその革新を受容する能力が極めて高い。HSBCの調査では中國の回答者の90%がテクノロジーによって生活は改善され、また89%がテクノロジーの進歩によって世界はより良くなるとの見方を支持した。   実際、中國の消費者は新しいテクノロジーが秘める可能性に沸き立っており、79%の消費者が出來る限り新しいテクノロジーを使って用事の大半を済ませたいと考えている。事実、中國では指紋認証技術を取り入れることに積極的で利用率は40%と世界最高であり、インドが31%でそれに続いている。対照的にフランスとドイツでは指紋認証技術を本人確認に利用している比率は9%、カナダでは14%にとどまっている。 「BAT」をはじめとする中國のテクノロジー企業は巨額のイノベーション投資を行っており、人工知能の研究では最先端を走っている。人工知能は醫療機器から自動運転、決済サービスなどの分野の製品の機能性をさらに高める技術として、電力の発明に匹敵するほどの影響を人類生活に及ぼすと予測されている。 13億人の膨大な消費者、迅速な規模拡大が可能 また中國では、國內の巨大なインターネット産業が生み出す膨大なデータの通信に必要な物理的インフラを、一部の先進國をはるかに上回る規模で構築している。中國の地方村落の大半では4G通信が可能であり、インターネット接続速度では歐州內の多くの首都をしのいでいる。これによってオンラインショッピングを利用する消費者の利便性は大幅に向上し、オンラインで購入した品物は効率化の進んだ配送會社と近代的な高速交通網によって玄関口まで配送される。 おそらく最も重要な點は、中國には13億8,000萬人もの膨大な消費者が存在するということだろう。これを背景にインターネット企業やテクノロジー企業は迅速に規模を拡大することができる。有望な新興企業は、この巨大な市場のごく一部を捉えさえすれば、その將來性だけでベンチャーキャピタルから資本を引き出すことができる。 まさにこれが今、珠江デルタで起きていることである。米國のシリコンバレーに觸発されて、深センにはベンチャーキャピタリスト、アクセラレーターそして巨大テクノロジー企業出身者が集まり、次に成功する新興企業を見出そうとしている。 こうした要素のすべてが、既成概念を覆す大変革を生み出している。中國のインターネット企業が世界的な成長を遂げている中で、次世代の世界的なインターネット巨大企業は中國から誕生すると考えるのが妥當だ。それは、中國の大手旅行サイトのシートリップ(Ctrip)がスコットランドの同業スカイスキャナーを買収したような企業買収の形で進むこともあれば、またアリババの決済サービス「アリペイ」のように小売業者の世界的ネットワークを構築し、事業の成長により拡大する形で進むこともあるだろう。 アイデアに詰まった米國のシリコンバレーのトップは、中國のシリコンデルタに目を向けてみると何か得られるかもしれない。數年中にはもっとはっきりとそのような狀況になっているはずだろう。  

    ASEAN発足50周年、インフラ事業を基盤とする経済成長の黃金期が到來 HSBCレポート

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC商業銀行部門アジア太平洋地域統括責任者のスチュワート?テイト氏がレポートします。 ASEAN主要経済圏、今後5年間でインフラ投資2倍に 今年で発足50周年を迎えるASEAN(東南アジア諸國連合)の主要経済圏は、今後5年間にインフラ投資を2倍に拡大して7,000億米ドル超とすることを約束している。これによって貿易や観光産業、今後數十年間の持続的な経済成長のための開発事業に弾みがつく可能性がある。 またASEANのメンバー10ヵ國の経済政策における財政支出計畫の焦點は、主に2020年にかけて輸送環境を整備することにある。 世界経済フォーラムの國際競爭力レポートでは、長期的に堅調な経済を創出する上でインフラが極めて大きな役割を果たすことから、こうした投資が重要であるとされている。 さらに、ASEAN內外の貿易や投資を活発化し、人とモノの流れを円滑にするために、一段と連攜を強化することの重要性も軽視できない。 こうした取り組みは、世界最大の人口を抱えて急速に成長を遂げる、活気に満ち溢れたASEAN地域において域內外の企業が事業機會を最大限に拡大するための支援となる。ASEAN諸國全體のGDPは約2兆8,000億米ドルとすでに世界第7位の規模にあり、今後2030年までには世界第3位まで入ってくることが予想される。 ASEAN地域のサプライチェーンの輸送網が改良されれば輸入コストが減少する。現在の世界貿易の70%を中間財やサービス、資本財が占めているとの世界銀行の推計から判斷してもコスト減少の効果は決して小さいものではない。   ASEANの潛在的な購買力に中國も期待 またASEANでは、今後數10年間に新たに創出が見込まれる5,700萬世帯の中間層家計の消費活動を追い風に、貿易數量が2014年から2025年の間にほぼ倍増して2兆8,000億米ドルに達すると予想されていることからも、サプライチェーン改良のもたらす効果は小さくない。 こうした裕福で若い都市人口の増加により巨大な消費者購買力が見込まれることは、中國が「一帯一路」構想の下で貿易活性化につながるインフラ整備や投資、事業を強化しようとする大きな理由でもある。 ASEANと中國は、相互貿易額を昨年の5,000億米ドルから2020年までに倍増させて1兆米ドルにするとの目標を掲げている。こうした背景からもインフラ投資や主要プロジェクトに関わるエコシステム事業の機會は特に魅力的なものとなっている。   インドネシアに大規模な事業機會 ASEAN域內のあらゆる大國に事業機會はみられるが、直近で大規模なチャンスが生まれているのはインドネシアである。 インドネシアが2016年から2020年の間に計畫しているインフラ投資は3,500億米ドルとASEAN主要5ヵ國の合計額の約半分に相當する。それには以下のような理由がある。 ASEANで最大の経済規模を有するインドネシアでの輸送インフラへの投資はGDP比6%と域內で最も低い水準にあり、フィリピンの同13%やマレーシアとタイの19%、シンガポールの31%に遅れをとっている。 インドネシア政府のインフラ予算は2014年以降に倍増したが全體的な支出必要額には遠い。また財務省は2015年から2019年までに民間セクターには1,300億米ドル相當の事業機會が生じると推計している。   タイは1,200億米ドルのインフラ支出を計畫 インドネシアに次ぐ規模のインフラ市場を有するのはタイである。事業規模で700億米ドルに相當する56件の巨大プロジェクトを始めとする、1,200億米ドルのインフラ支出が計畫されている。 タイでは、GDPの84%を製造業が占め、また製造業製品のほぼ全て(96%)が陸上輸送されているという現実が、輸送網の改善を促す背景となっている。 早期著工が予定される56件の巨大プロジェクトの事業規模が700億米ドルであることに加え、事業規模440億米ドルの「東部経済回廊」開発計畫によりタイは民間セクターの資金調達の主要市場となり、必要資本の4分の1前後は「官民連攜(PPP)」の下で調達される見通しである。   フィリピン、道路?鉄道整備の「ドリームプラン」 ASEANの議長國を50周年の節目の年に務めているフィリピンも、2017年から2022年までに1,440億米ドルの積極的なインフラ投資を行うことを念頭に、今後數十年間をかけて競爭力を強化するための畫期的な計畫を策定している。 実施が予定されている投資案件の約90%は輸送網に関連するものであり、また政府が「ドリームプラン」と稱する2018年から2020年までの道路と鉄道に係る直近の整備事業の規模は410億米ドルである。 フィリピンでは政府が稅制改正に動いていることによって外國からの対內直接投資が促進され、外國資本による企業所有の規制が緩和されている。また一段の民間投資が促され、すでに中國企業がフィリピンのインフラ事業に參畫し始めている。   マレーシアは鉄道投資を柱に輸送網を整備 マレーシアでは、輸送網を巡る大きな事業機會は、國內の各地域間の連絡や地方における連絡を活性化し経済効率を改善することであり、また適切に統合された輸送システムを創設し、ASEAN地域における國際貿易ハブとしてのマレーシアの地位向上につながる物流能力を高度化することにある。 2016年から2020年までの5年間のインフラ支出計畫は850億米ドルとされ、2011年から2015年までの500億米ドルから増加している。 輸送網の整備への支出においては鉄道投資が柱とされ、シンガポールとバンコクをつなぐ高速鉄道を中心に、現存の大量輸送能力を強化し東海岸の開発を進める計畫が立てられている。   シンガポール、地下鉄システムの規模を拡大 シンガポールの輸送インフラはすでに世界最高水準だが、さらに都市國家として地下鉄システムの規模を2030年までに2倍に拡大する政府計畫の下で一段と進歩する見通しだ。 2016年から2020年までの期間に3つの新しい路線を建設して地下鉄網をさらに113キロメートル延伸させる事業では、600億米ドルの新規投資が生まれると予想される。これは2011年から2015年までの期間の投資額の500億米ドルを上回っている。   ASEANはインフラ事業を基盤に黃金期へ ここに挙げた全ての経済活動は、ASEANの各経済圏が未來を見據えて経済成長と経済開発の基盤作りに注力していることの表れである。 すなわち、50周年を迎たASEANではインフラ事業が貿易と投資の成長を下支えする黃金期が始まろうとしているのである。

    10周年を迎えるグリーンボンド市場 HSBCレポート

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC グローバル?バンキング&マーケッツ、アジア太平洋地域統括責任者のゴードン?フレンチ氏がレポートします。 グリーンボンド、2016年の発行額は900億ドル以上 注目高まる 最初のグリーンボンドが発行されて今年で10年目となるが、グリーンボンド市場は成熟した市場を目指して現在も急成長中である。気候変動の影響を抑制する世界経済全體の取組みを支援するプロジェクトの資金源としてその重要性は一段と高まっている。 これまでの10年間を幼年時代とするならば、全く心配のない幼年時代だったとは必ずしも言えない。世界初の「グリーンボンド」が発行されたのは2007年7月で、その発行額は6億ユーロだった。その後に続く動きもまずまずだったが、當初の勢いは影を潛めていた。2013年には年間発行額が100億米ドルの節目を上回ったが、それでも債券市場全體から見れば極小さな存在だった。 しかし10年の年月を経た今、資本市場に生まれたグリーンボンドという幼子は目覚ましく成長した。昨年のグリーンボンド発行額は900億米ドルを突破し、2015年の2倍以上となった。その中にはポーランドが発行した、発行額7億5,000萬ユーロの世界初のソブリン?グリーンボンドが含まれる。この1月にはフランスが22年物の発行額70億ユーロのグリーンボンドを発行した。これは発行額と長期年限の面で畫期的だっただけでなく、投資家の需要が230億ユーロ超にまで膨らみ、発行予定額を大きく上回ったことでも大きく注目された。 成長を確信する3つの理由   気候変動は地球にとって差し迫った脅威であり、炭素集約度の高い技術やインフラを減らしていく取組みに充てる資金を確保するためにはまとまった資本注入が必要である。それは、風力発電タービンや太陽光発電企業、低炭素型交通システム、建造物や街全體のエネルギー効率と水資源利用効率を一段と高める技術などの進歩に向けて活用される。 グリーンボンド市場の発展は緩やかかもしれないが、今や低炭素社會を創り出す上で欠かせない存在になっている。気候変動を抑制する事業への投資機會を求めている資金は世界的に増加している。グリーンボンド市場は、企業がそうした資金を利用することを可能とし、またそうした資金を持続可能な環境に保つためのプロジェクト資金に振り向けていくものである。   現時點では世界の債券市場の1%にも満たない規模のグリーンボンド市場だが、我々が今後急速に成長すると確信する以下の理由がある: ①まず、汚染や世界的気溫上昇から生じるリスクについての企業や消費者、投資家の認識に根底から変化が生じている。2015年に採択されたパリ協定では気候変動に対処する必要性について全會一致の世界的合意が成立した。その前提として、世界の平均気溫上昇を産業革命前と比較して摂氏2度未満に抑える目標に向け、國家的な計畫の推進を200ヵ國近い加盟國が批準することが必要だった。これを受けて環境技術の投資とそのための資金調達が活発化した。 ②次に、技術進歩によって(代替エネルギー技術から電気自動車、バッテリーまで)経済的合理性を備えた低炭素型技術がますます増えている。倫理的な意味だけでなく財政面からも環境投資は一段と理にかなったものとなりつつある。 ③3つ目の理由として、中國とインドが環境重視の経済を強く支持する立場をとったことが挙げられる。中國とインドの発行體が2015年にグリーンボンドを初めて起債したことにより、それまではスカンジナビア諸國や米國、英國が中心だった市場が地理的に広がった。昨年は中國で330億米ドルあまりの規模でグリーンボンドが発行され、15年にわずか10億米ドルで始まった中國でのグリーンボンド発行はすでに世界全體の3分の1を超えた。インドでの発行額はそれよりかなり小規模で、昨年はわずか10億米ドル強だったが、インドもやはり低炭素技術に関するパラダイムシフトを経験している最中である。 グリーンボンドを支援する潮流の勢いは増しているため、債券発行體も投資家もグリーンボンドを無視できなくなっている。 機関投資家の多くは気候に配慮した投資先を増やしたい 気候変動や環境を重視する「グリーン」の姿勢を疑われる債券があることも事実である。調達資金が本當に気候変動や環境に関するプロジェクトに充てられるのか、あるいは「グリーン」な姿勢に疑問のある企業に調達資金が向かっていないか、といった問題である。さらに、ある債券発行が他と同じように「グリーン」であることを誰が評価するのかという問題もある。こうした問題についての一貫した透明性のある回答がいまだ得られない狀況に多くの投資家は置かれている。一方の債券発行體も、情報公開や運用報告、「グリーン」なベンチャー事業の認証などに追加的な作業やコストを投入することに消極的である。 しかし追加的な作業やコストは過大に見積もられる傾向があり、標準化と査定の取組みは進展している。例えば格付會社のスタンダード&プアーズは、ある債券がグリーンか否かだけではなくどの程度グリーンなのかを評価する仕組みをこの4月から実用化している。 またグリーンボンドへの然るべき評価がまだ十分に広まっていないと考えられるが、その利點は大きい。 まず、グリーンボンドの発行を通じて企業は、自らの投資ポートフォリオが炭素依存度の高い、持続可能でない債券発行體や事業に関わっていることを懸念している年金基金や政府系ファンドなどの投資家の間で増えている、グリーンボンドのような投資先を求める動きを捉えることができる。2016年の年初時點で、約23兆米ドルの資産が専門家による責任投資戦略の下で管理されている。これは2014年比で25%増であり、専門家が管理している世界全體の資産の4分の1を超えている。 同じように先にHSBCが行った調査でも、世界全體の機関投資家の3分の2が、低炭素型で気候に配慮した投資先への投資額を増やしたいと考えていることがわかっている。 さらにグリーンボンド発行によって、発行體は自らが地球溫暖化という長期的な課題を意識しそれに備えていることを周知させることができる。 また気候変動に関するリスク特性の特定や最小化、監視を発行體に要請することは、低炭素型の発想を発行體の企業文化や事業戦略に組み込んでいく上での支援となる。こうしたことが長期的には企業価値評価(バリュエーション)や事業見通しにおいて、準備の遅れている企業よりも優位に立つことにつながる。 このように、グリーンボンド市場が成長を遂げてきたことに対しては歓迎の一語に盡きる。10周年おめでとう。

    勢いを取り戻しつつある人民元の國際化 HSBCレポート

     QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBCグレーター?チャイナ統括 チーフ?エグゼクティブのヘレン?ウォン氏がレポートします。   人民元、世界的利用拡大へ インフラ整備拡充進む  人民元の國際化はこの1年減速したとみられるが、中國は水面下では人民元の世界的利用拡大のために引き続き金融インフラの整備拡充を進めてきた。國際取引での人民元の利用は2016年に大幅に減少した。世界中の銀行が國際資金決済のために利用している通信ネットワークであるSWIFTによれば、人民元建ての國際決済額は2016年に30%近く減少し、通貨別の國際取引額ランキングでは現在7位となっている(2016年初めには5位だった)。  オフショア人民元の預金も同様な狀況にある。中國本土以外での人民元の預金殘高は2015年初頭以來縮小してきた。オフショア人民元の世界最大の拠點である香港での人民元の預金は4月末現在で5280億元と、香港の預金殘高がピークをつけた2014年末の1兆元強から50%近く減少した。  人民元の利用と保有の減少は、中國経済の減速、人民元の下落、國際資本移動に関する規制強化に対する懸念と無関係とは言えない。しかしこうした現狀に対して、中國は外國人投資家が売買可能な國內資産の範囲を拡大して人民元の國際化を進めた。 3つのコネクト制度が人民元國際化の戦略を証明  まず中國の株式市場の開放が挙げられる。深セン市場と香港市場の間の相互株式投資制度(ストックコネクト)の導入が昨年8月に発表され、発表後4ヵ月足らずで運用が開始されたが、この制度によって外國人投資家は、より小規模で起業家精神あふれる企業に投資することが可能となった。こうした企業の成長は中國の経済改革の重要な構成要素となっている。現在では、世界中の投資家は香港市場を通して中國本土の市場に上場されている企業の大半に直接投資できるようになったが、こうした機會はわずか3年前には存在しなかった。 次に中國の債券市場の開放を挙げることができる。中國は今年5月に、中國の債券市場を世界につなぐ取引接続制度である「債券通(ボンドコネクト)」の導入を発表した。中國債券市場の発展におけるこの最新の畫期的な改革が正式に導入されれば、中國の資本市場開放における重要な出來事となるのは確実とみられる。 急成長している中國の債券市場の規模は世界第3位であるが、海外投資家の參加は限られている。中國の國債市場における外國人投資家の保有比率は2%未満にとどまり、日本の10%、英國の25%超、米國の50%程度を大きく下回っている。中國の債券市場の段階的な開放によって、発行者、投資家だけでなく、両者をつなぐ全ての取引仲介業者にも豊富な事業機會がもたらされるとみられる。   3つのコネクト制度、つまりボンドコネクト、深セン?香港ストックコネクトと2014年に一足先に導入された上海?香港ストックコネクトの導入の意義は、中國本土の債券、株式の世界的指數への組入れを実現したことだけにはとどまらない(MSCIは2017年6月20日に中國A株を同社の新興國市場指數に組み入れると発表した)。これら制度は人民元の國際化が中國の中長期的な戦略となっていることを証明するものでもある。直近では今年3月に中國人民銀行がこの見方を再確認した。 人民元決済の拡大、一帯一路構想も影響  國際取引で人民元の利用が2016年に減少したにもかかわらず、外國為替市場と金融市場の改革を進め、中國経済と金融市場を開放し、人民元の國際通貨化を推進する姿勢を中國が明確にしているという事実に変化はない。   オフショア人民元市場は、貿易決済額と預金殘高が減少しているため、短期的な課題に直面する可能性はあるが、引き続き戦略的に重要な市場である。ボンドコネクトのような國際投資のための制度を導入することは、オフショア人民元市場の広がり、深さ、健全性を改善させるだけでなく、同時に人民元の國際化に再度弾みをつけるであろう。  もう一つのきっかけは、一帯一路構想である。人民元國際化の背景には中國の貿易額の拡大に加えて、人民元によるその決済がある。2016年には一帯一路に関係する國々と中國との貿易額の伸び率が中國の貿易額全體の伸び率を上回ったことを考慮すると、一帯一路は、地域內および地域間の接続性を強化することにより長期的に一帯一路沿いの地域の貿易を拡大させるのに加えて、貿易決済での人民元の使用も拡大するとみられる。  さらに重要なのは、一帯一路構想によって資金調達の際の人民元利用の増加が見込まれる點である。政府の後押しもあって、中國企業は一帯一路関連プロジェクトに積極的に參加している。一帯一路関連プロジェクトを推進している國々で事業を展開することにより、これら企業は人民元建てのバランスシートで管理されるため、現地の人民元建て流動資産のプールは拡大するとみられる。プロジェクトを推進している國では全ての通貨が常に流動性不足に直面しており、また多國籍金融機関は十分な資金を供給できるとは限らないため、人民元は資金調達通貨として競爭上の優位性を備えている。  従って、オフショア人民元の流動性プールの拡大に加えて、人民元建債券発行に対する需要の増加によって、価値保蔵手段としての人民元の魅力が高まるとみられる。さらに一帯一路関連のインフラ建設プロジェクトによって人民元のヘッジのための需要も増加するとみられる。中國の國內債券市場の開放も手伝って、人民元の國際取引での利用も増加するとみられる。  人民元の國際化はこの1年減速したかもしれないが、中國は資本市場の開放を続けてきた。さらに、一帯一路構想の影響で徐々に貿易取引および資金調達通貨としての人民元の利用は拡大するとみられる。人民元の國際化は勢いを取り戻しつつある。

    ニューエコノミーの離陸 HSBC中國レポート

    QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各國?地域のアナリストや記者の現地の聲をニュース形式で配信しています。今回は、HSBC中國のデビッド?リャオ(David Liao)社長兼CEOがレポートします。 雲に覆われた風の強い5月の午後に、上海浦東國際空港から乗客を乗せていない旅客機が離陸した。オレンジ色のジャンプスーツを著た5人のテストパイロットが操縦するその旅客機は長江デルタの上空を1時間ほど飛行すると帰路につき、浦東空港に著陸した。 目的地のない短時間の飛行ではあったが、この飛行は中國初の國産大型旅客機となる「C919」の試験飛行の成功を象徴するものであった。過剰設備と非効率性から脫卻し、國內製造業の生産能力を向上させようとする中國の経済改革路線における畫期的な出來事である。  中國は、高度ハイテク産業を世界最大で最先端の國と競爭できるものに仕立てることを通じて國內経済の新しい局面を切り開く取り組みを積極的に推進している。 中國、2016年から供給サイドの構造改革  市場規模は數兆ドルと推計される世界のジェット機市場において、今後20年のうちに中國の國産旅客機がボーイング社やエアバス社の旅客機と競爭する存在となることは果たして可能だろうか。これを疑問視する見方もあるが、中國がしばしば驚くべき能力を発揮することも確かである。パソコンやスマートフォン、民生用ドローンなどの産業において中國は當初は全く意識されない存在だったが、その後世界を主導する立場に成長している。  GDP成長率が過去數年にわたる減速を経て安定化している現在は、中國にとって大切な経済転換のための過渡期である。重要なのは、2011年から減少が続いていた民間投資がようやく回復に転じ、素材?機械設備の製造業からサービス業にいたるまで広範なセクターで投資が反発を見せていることである。輸出も世界的需要の増加と供給サイドの改善を背景に成長していくと見込まれている。  2016年初めから中國は供給サイドの構造改革を進め、新しい技術や産業、製品を振興するかたわら非効率的な國有企業の経営刷新や生産設備の削減、負債の圧縮に取り組んできた。 これらの取り組みは、高度な製造業セクターでの「メイド?イン?チャイナ2025」戦略や、経済成長の新たなけん引役を育成するための革新的な「ニューエコノミー」戦略と統一性がとれている。 ニューエコノミー、起業家精神などの推進力が必要 ニューエコノミーが定義する範囲は広い。昨年、李克強首相はその概念について、eコマースやクラウドコンピューティングといった新興産業にとどまらず、スマート製造業や大規模カスタマイズ生産、家族経営農場までを包括するものであると説明している。このような経済には起業家精神や技術革新といった推進力が必要となる。従って中國の民間セクターがこのニューエコノミーをけん引する上でより大きな役割を擔い、一段と持続可能な経済成長を実現するための課題に対応していくことになる。  すでに中國では、起業家精神にあふれる企業が先導的役割を果たす例が目立つようになっている。4月にはメッセージと通話のアプリのウィーチャット(WeChat)を生み出したIT企業テンセント(騰訊)が時価総額で世界10位となり、11位には中國の大手eコマース企業アリババが続いた。この2社が中國企業の時価総額1位と2位を占めていることは、國有銀行や國有エネルギー會社がかつての支配的地位から徐々に退きつつある実情を物語っている。  そしてニューエコノミーの勝者であるこれらの企業には、なお一層の成長の余地がある。HSBCがテクノロジーに対する消費者の信頼感に関して5月24日に発表した調査結果からは、テクノロジーで生活が向上するとの信頼感において中國の消費者が世界をリードしていることがわかった。これは巨大かつ有望な市場を創設していく機會を革新的な中國企業に與えるものである。 テンセント、メッセージアプリは月間9億4000萬人が利用 深センを本拠地とするテンセントを例に挙げれば、3月末時點で同社のメッセージアプリのウィーチャットおよび微信(Weixin)の月間アクティブユーザーは約9億4,000萬人に達し、より若い世代をターゲットとする「QQ」アプリでは8億6,000萬人を超えた。消費者はこれらのアプリをオンライン?ゲームの支払いやその他の料金の支払いだけでなく、資産管理にまで利用している。しかしそれにとどまることなく、これらのプロダクトを収益化する斬新で創造的な手法が継続的に生み出されている。 中國のテクノロジー企業は未來への備えも進めており、人類の生活に將來與える影響としてはかつての電気の発明に匹敵するとも予想される、人工知能(AI)の最前線の研究に取り掛かっている。3社まとめて「BAT」と呼稱される百度、アリババ、テンセントの大手テクロノジー企業はこぞってAIやソフトウェアに巨額の投資を行い、醫療機器や自動運転車、決済サービスなどの面からプロダクトを強化していく態勢にある。  中國のハードウェア企業も技術革新の面では遅れをとってはいない。いずれも深センを本拠地とするスマートフォン製造のZTEとファーウェイ(華為技術)の2社による昨年中の特許出願件數は約8千件に達し、発明企業として世界1位と2位の座を占めた。國內のスマートフォン市場を制覇した中國ハードウェア企業のプロダクトは國外でも支持を伸ばし、ファーウェイやオッポ(OPPO)、シャオミ(小米科技)などの製造業企業は東南アジアからインドにいたるまでの新興國市場で市場シェアを獲得している。 中國のシリコンデルタとして急速に知られるようになった珠江デルタ地域を中心に、テンセントやファーウェイのような大規模テクノロジー企業がさらに出現する可能性がある。米國のシリコンバレーに倣って、深セン市はベンチャー投資家や起業間もない企業に少額投資を行うアクセラレーター、ハイテク大手の創始者などをつなぐエコシステムの構築を進め、次代の有望な新規事業の創出に備えている。 例えば、中國の配車サービスアプリ市場で米國のウーバー(Uber)との競爭を制したことで知られる滴滴出行(Didi Chuxing)は、現在では世界における最も貴重な新興企業の一つとされる。創業者はかつてアリババで経営幹部を務めた人物であり、またテンセントは早い段階から同社に投資していた。 中國政府、ネット企業支援の1000億元基金を創設 こうした経済構造の転換を支える最近の動きとして、今年中國政府はインターネット企業を支援するための1,000億人民元の基金を発足させた。それに先立って広東省では、ロボット工學や醫療機器の分野などの関係団體を地理的に集積させるスマート製造業クラスターの計畫が発表されている。  中國の「ニューエコノミー」に參加したいと考えている中國國外の投資家の選択肢も広がっている。中國本土で上場されている株式が香港市場で取引されるようになったことで、國外投資家は一段と多くの中國企業への投資が可能となった。また中國の債券市場を、香港市場を介して國外投資家に開放することも計畫されている。中國本土企業の株式や債券が世界的な指數に組み込まれる可能性があり、そうなれば投資機會はさらに広がる。  中國の経済構造転換の今後の道のりが長いことは、國産旅客機C919の初の試験飛行からも明らかである。そして國外から調達した部品がC919型機に使われていることと同じように、中國がニューエコノミーを確立するためには國際的な協力と専門的技術が欠かせない。そこに投資機會が存在する。  

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